◎豪、米国、日本、ニュージーランドはこの地域で中国が影響力を強めていることに懸念を表明している。
サモアのフィアメ首相(左)とオーストラリアのウォン外相(Australian Department of Foreign Affairs)

オーストラリア政府は21日、太平洋島嶼国の気候変動対策と安全保障を支援するために、海外開発援助予算を増額すると発表した。

ウォン(Penny Wong)外相は仏領ポリネシアで開催された高官級協議の中で、今後4年間で海外開発援助予算を14億豪ドル(約1320億円)増額すると発表した。このうち約9億豪ドル(約847億円)が太平洋諸国に割り当てられる。

またウォン氏は、「この追加援助は気候変動に関する同地域の取り組みを支援する」と説明した。

豪連邦議会は来週、補正予算を可決する予定で、4600万豪ドルがソロモン諸島への治安維持部隊の派遣費用として計上される。

ウォン氏はこの援助について、中国を念頭に置き、「この地域の安全は自分たちで守るという確固たる信念と、他国の介入を減らすためのものである」と説明した。

またウォン氏は「こうした投資がなければ、他国がその空白を埋め続けることになる」と述べ、太平洋地域におけるモリソン前政権の失敗に言及し、「遅れを取り戻さなければならない」と強調した。

オーストラリア放送協会(ABC)によると、ウォン氏は今回の予算増額について、「豪は世界でより影響力のある国になるという目標に向けた一歩である」と説明した。

政府は太平洋地域における航空監視強化に3000万豪ドル、太平洋全域の豪国境警備隊のネットワーク構築に1900万豪ドルを追加計上する予定だ。

またこの地域へのコンテンツ配信などを拡大する取り組みには3200万豪ドルを投資する。

豪、米国、日本、ニュージーランドはこの地域で中国が影響力を強めていることに懸念を表明している。

中国は今年4月、ソロモン諸島と安全保障協定を締結し、この地域の国々に衝撃を与えた。

ソロモン諸島と中国は安全保障協定の最終版を公表していないが、3月末にリークされた協定の草案によると、「中国はソロモン諸島の要請があれば、中国軍(警察含む)の派遣を認める」としている。

しかし、ソロモン諸島のソガバレ(Siaosi Sovaleni)首相は今月初めにキャンベラを公式訪問した際、「中国人民解放軍の駐留を決して認めない」と断言した。

ウォン氏は仏領ポリネシアの首都パペーテに総領事館を開設すると発表し、「これで豪は世界で唯一、太平洋諸島フォーラム(PIF)に加盟する18の国・地域と公式の外交関係を持つ国となった」と述べた。

またウォン氏はこの地域の課題について、▽気候変動▽コロナウイルスからの回復▽安全保障の3つを挙げた。

さらにウォン氏は、コロナが観光産業にもたらした影響や、ロシアの「違法かつ不道徳なウクライナ侵攻」についても言及した。「コロナは観光産業に、そしてロシアの侵略戦争は世界の経済・食料安全保障・エネルギー供給に大きな影響を与えています...」

この地域で豪と連携する日本の岸田首相は21日、豪西海岸の都市パースに向け出発した。岸田氏は22日にアルバニージー(Anthony Albanese)首相と会談し、インド太平洋地域の安全保障やエネルギー問題などについて協議する予定。

サモアのフィアメ首相(左)と中国の王毅外相(Getty Images/AFP通信)
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