オーストラリア住宅価格高騰、税制優遇措置の廃止に動く政府
オーストラリアでは近年、住宅価格が急騰し、シドニーやメルボルンでは平均住宅価格が100万豪ドルを超える地域も珍しくない。
.jpg)
世界でも有数の住宅価格高騰に直面するオーストラリアで、不動産投資家向けの税優遇措置を見直す動きが大きな政治争点となっている。アルバニージー政権は2026年度予算案で、「ネガティブ・ギアリング」と呼ばれる損失控除制度やキャピタルゲイン税(CGT)の優遇措置を縮小する方針を打ち出した。若年層の住宅取得を後押しする狙いだが、「住宅価格を本当に下げられるのか」を巡って議論が広がっている。
オーストラリアでは近年、住宅価格が急騰し、シドニーやメルボルンでは平均住宅価格が100万豪ドルを超える地域も珍しくない。住宅ローン金利の上昇や人口増加、慢性的な住宅供給不足が重なり、若者や中間層の「持ち家離れ」が深刻化している。報道によると、親世代が容易に購入できた住宅を、現在の若年層は到底買えない状況に直面しており、「住宅所有の夢」が崩れつつある。
問題視されている制度の一つがネガティブ・ギアリングだ。これは、投資用不動産の維持費やローン利息が家賃収入を上回った場合、その損失分を給与所得などから差し引いて課税額を減らせる仕組みである。さらに、1年以上保有した資産売却益への税率を半減するCGT優遇措置もあり、不動産投資を後押ししてきた。専門家の間では、こうした制度が投機的な住宅購入を促し、価格高騰を招いたとの批判が根強い。
今回の予算案では、2027年7月以降、新築住宅以外の投資物件についてネガティブ・ギアリングを制限する。また、CGTについても現行の一律50%割引を廃止し、インフレ調整方式へ移行する方針だ。政府は投資家の需要を抑制することで、今後10年間で約7万5000戸が投資家ではなく一般購入者の手に渡ると試算している。
チャーマーズ(Jim Chalmers)財務相は「住宅市場と税制のゆがみを是正する必要がある」と強調し、「若者が住宅市場に足場を築けない現状を放置できない」と説明した。政府は同時に住宅インフラ整備基金として20億豪ドルを投入し、約6万5000戸の新規住宅建設を支援する方針も示している。
ただし、制度変更の効果には懐疑論も多い。政府自身の試算でも、税優遇縮小によって住宅価格上昇率は一時的に年2%程度鈍化するにとどまり、賃料は週2豪ドル程度上昇する可能性があるという。また、民間投資が減少することで、住宅供給が約3万5000戸減少するとの予測も出ている。
野党・自由党は「住宅不足を悪化させ、家賃高騰を招く」として法案に反対している。ティム・ウィルソン(Tim Wilson)氏は法案について、「増税であり、生活水準を引き下げる政策だ」と批判した。一方、左派の緑の党は「改革が不十分」と反発し、富裕層対策の強化を求めている。
SNSやオンライン掲示板でも議論は過熱している。掲示板Redditでは、「やっと改革に踏み込んだ」と歓迎の声が上がる一方、「市場崩壊を招く」「結局は家賃上昇につながる」といった不安も多く投稿されている。特に、既存の投資家には優遇措置が維持される条項を巡っては、「不公平だ」との批判が目立つ。
オーストラリアでは、住宅は長年「最も安全な資産」とされ、多くの家庭が不動産投資によって資産形成を行ってきた。そのため、税制改革は単なる住宅政策ではなく、世代間格差や富の再分配の問題とも直結する。今回の見直しが住宅価格抑制につながるかは不透明だが、少なくとも「住宅を投資対象とするのか、生活基盤とするのか」という根本的な問いを国民に突きつけている。
