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ASEAN首脳会議、エネルギー危機など協議、統一的な対策打ち出せず

今回のサミットではイランを巡る軍事衝突とホルムズ海峡の機能低下が主要テーマとなった。
2026年5月8日/フィリピン、セブ島、第48回ASEANサミット(ロイター通信)

フィリピン・セブ島で8日、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議が行われた。中東情勢の悪化によるエネルギー危機への対応が最大の議題となったが、加盟国が合意できた具体策は、域内で燃料を融通し合う「石油共有協定」の早期批准を目指す方針にとどまった。ホルムズ海峡の事実上の封鎖によって石油輸送が混乱する中、エネルギー輸入依存度の高い東南アジア経済への打撃が強まっているものの、ASEANとして統一的な危機対応を打ち出せなかった形だ。

今回のサミットではイランを巡る軍事衝突とホルムズ海峡の機能低下が主要テーマとなった。同海峡は世界の石油・天然ガス輸送の要衝で、紛争前には世界のエネルギーの2割が通過していた。中東産原油への依存が高いASEAN諸国ではガソリン価格が急騰し、物流や食料価格にも影響が広がっている。フィリピン政府は早い段階で「エネルギー非常事態」を宣言し、ASEAN全体での対応を呼びかけていた。

議長国フィリピンのマルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領は会議後の記者会見で、加盟国間で石油を融通する枠組みについて「できるだけ早期の発効を目指す」と表明した。ただ、実際の運用方法については未定の部分が多く、「誰にどれだけ配分するのか」「費用をどう負担するのか」といった課題が残っていると説明した。協定は商業ベースでの自主的な支援を前提としており、法的拘束力や強制的な備蓄放出の仕組みは盛り込まれていない。

経済相会合では、エネルギーと食料安全保障を確保するため、調達先や輸送ルートの多様化、危機時の情報共有強化などが提案された。しかし、具体的な数値目標や実施時期は示されず、実効性を疑問視する声も出ている。ASEANは加盟11カ国の経済規模や政治体制の差が大きく、欧州連合(EU)のような強力な統合機関も持たない。このため、過去にも共同声明にとどまり、危機対応が後手に回るケースが少なくなかった。

一方、会議では安全保障問題も協議された。フィリピンは南シナ海問題を巡り、ASEAN海洋センターの創設を提案。中国を直接名指しはしなかったものの、航行の自由確保や海上安全保障での連携強化を訴えた。南シナ海では中国とフィリピンの対立が続いており、マルコス・ジュニア氏は現状を「予測不能」と表現した。また、ASEANは中国との「南シナ海行動規範」を年内にまとめる目標を維持する方針も確認した。

ミャンマー情勢についても協議が行われたが、大きな進展はなかった。2021年のクーデター以降、ASEANはミャンマー軍政指導部の首脳会議参加を認めていない。ただ、軍主導の新政権との対話を模索する動きも出ており、加盟国間の温度差が改めて浮き彫りとなった。マルコス・ジュニア氏はASEAN内部で「活発かつ感情的な議論」があったと明かした上で、ミャンマーの和平プロセスは「停滞している」と認めた。

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