オーストラリアとバヌアツが二国間協定に署名、中国による軍事基地の建設を阻止
協定には、バヌアツ国内への外国軍基地の設置を認めないことや、重要インフラの軍事利用を防ぐことが盛り込まれ、中国による軍事拠点建設の可能性を事実上排除する内容となった。
とバヌアツのナパット首相(AP通信).jpg)
オーストラリアと南太平洋の島国バヌアツは29日、安全保障と経済協力を柱とする包括的な二国間協定「ナカマル協定」に署名した。協定には、バヌアツ国内への外国軍基地の設置を認めないことや、重要インフラの軍事利用を防ぐことが盛り込まれ、中国による軍事拠点建設の可能性を事実上排除する内容となった。中国との影響力争いが激化する南太平洋地域において、オーストラリアが外交・安全保障面で大きな成果を収めた形である。
署名式はオーストラリアの首都キャンベラで行われ、アルバニージー(Anthony Albanese)首相とバヌアツのナパット(Jotham Napat)首相が署名した。アルバニージー氏は記者会見で、「この協定は外国の軍事基地が設置されないことを保証するものであり、両国の安全保障と主権を守る均衡の取れた合意だ」と強調した。ナパット氏も、協定はバヌアツの主権を損なうものではなく、自国の利益に基づいて締結したものだと説明した。
ナカマル協定は安全保障協力に加え、経済開発やインフラ整備、災害対応、警察・海上保安分野での連携強化を柱としている。オーストラリアは今後10年間で総額5億豪ドル規模の支援を実施する方針で、港湾や空港、通信網、エネルギー施設などの整備を支援する。また、バヌアツが第三国と重要インフラ事業を進める際にはオーストラリアと協議することも定められ、外国勢力による軍事利用や安全保障上のリスクを未然に防ぐ仕組みが導入される。
協定では中国を名指ししていないものの、背景には中国の影響力拡大への警戒感がある。中国は近年、バヌアツに対して港湾整備や政府庁舎建設など大規模な支援を行い、中国海軍艦艇も同国へ寄港を重ねてきた。特に中国の支援で拡張された港湾施設については、将来的に軍事利用される可能性があるとの懸念がオーストラリアや米国で指摘されてきた。一方、中国とバヌアツは軍事基地建設の計画を一貫して否定している。
協定の締結は当初予定より大幅に遅れていた。バヌアツ側では、従来案が中国など第三国からの投資を過度に制限するとの懸念が与党内で示され、内容の見直しが進められていた。最終的には、外国からの投資自体は禁止せず、安全保障上重要な案件についてオーストラリアと協議する現在の形で合意に至った。
一方、中国外務省はナカマル協定について、地域の発展と安定に資するものであると期待したうえで、地政学的対立の道具として利用されるべきではないとの立場を示した。バヌアツ政府も中国とは別途、経済協定の締結を目指していることを明らかにしており、オーストラリアとの安全保障協力を強化する一方で、中国との経済関係も維持する姿勢を崩していない。
南太平洋では近年、中国とオーストラリア、米国との間で安全保障やインフラ整備を巡る競争が激化している。ナカマル協定はバヌアツの主権を尊重しながら地域の安全保障体制を強化する枠組みと位置付けられている。
