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ベネズエラ暫定大統領が国際司法裁判所に出廷、エセキボ地域めぐる裁判

エセキボ地域はガイアナの国土の約3分の2を占める資源豊富な地域で、長年にわたりベネズエラが自国領と主張してきた。
南米ガイアナとベネズエラの係争地エセキボ地域(AP通信)

南米のベネズエラとガイアナの間で長年続く領土問題をめぐり、ベネズエラのロドリゲス(Delcy Eloína Rodríguez Gómez)暫定大統領が10日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に出廷し、自国の主張を訴えた。争点となっているのは、金やダイヤモンド、木材資源に加え、大規模な海底油田も確認されている「エセキボ地域」の帰属問題である。面積は約16万平方キロに及び、ガイアナ国土の約7割を占める。

ベネズエラはこの地域が19世紀末の仲裁裁定によって不当に奪われたと主張している。1899年、当時の英領ギアナとベネズエラの国境を定めた仲裁裁定では、エセキボ地域の大部分が英領側に帰属するとされた。しかしベネズエラ側は、この裁定が欧米列強の政治的圧力や不正な取引によって成立したものであり、法的正当性を欠くと訴えている。ベネズエラのモンカダ(Samuel Reinaldo Moncada Acosta)国連大使は法廷で、「植民地主義時代の不正義が固定化された」と批判し、裁定は無効だと主張した。

これに対しガイアナ側は、1899年の裁定は国際法上有効であり、現在の国境線もそれに基づいて形成されていると反論している。ガイアナ政府は2018年、国境の法的確定を求めてICJに提訴した。ICJは2020年に審理権を認め、以降、本格的な審理が進められている。ガイアナのトッド(Hugh Hilton Todd)外相は10日、法廷で「国家の領土保全と主権が脅かされている」と述べ、ベネズエラの主張を退けるよう求めた。

近年、この問題が再び国際的注目を集める背景には、エセキボ沖で巨大油田が発見されたことがある。米石油大手エクソンモービルなどによる開発が進み、ガイアナは世界有数の産油国へと急成長した。一方でベネズエラ国内では経済危機や政治混乱が続き、領土問題をめぐる強硬姿勢が民族主義を高揚させる政治的手段として利用されているとの指摘もある。2023年にはベネズエラ政府がエセキボ地域を自国の州として編入する方針を示し、緊張が高まった。

今回の審理でベネズエラ側は、ICJそのものの管轄権についても疑問を呈した。ベネズエラ政府は1966年に締結された「ガイアナ・ベネズエラ国境紛争に関する協定」こそが問題解決の枠組みであり、二国間交渉によって決着を図るべきだと主張している。一方、ガイアナ側はICJの判断こそが唯一の平和的解決手段だとしている。最終判決には数カ月を要する見通し。判断は両国関係だけでなく、南米地域の安全保障やエネルギー開発にも大きな影響を与える可能性がある。

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