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アルゼンチンで反政府デモ、公立大学の予算削減に抗議

ブエノスアイレス中心部では、参加者らが大統領府周辺に向けて行進し、「公教育を守れ」「大学は特権ではない」と書かれた横断幕を掲げた。
  • 2026年5月12日/アルゼンチン、首都ブエノスアイレス、国立大学の予算増額を求めるデモ(AP通信)
  • アルゼンチン、チェーンソーパフォーマンスを披露するミレイ氏(Getty Images)

    アルゼンチンで12日、ミレイ政権による公立大学の予算削減に抗議する大規模デモが行われ、首都ブエノスアイレスをはじめ各地で数万人の市民や学生、教職員らが街頭に繰り出した。急進的な財政緊縮政策を進めるミレイ(Javier Milei)大統領に対し、教育分野への「チェーンソー改革」だとして批判が集まっている。

    ブエノスアイレス中心部では、参加者らが大統領府周辺に向けて行進し、「公教育を守れ」「大学は特権ではない」と書かれた横断幕を掲げた。抗議デモはコルドバやロサリオなど地方都市にも広がり、国内の大学関係者による「連邦大学行進」として展開された。

    アルゼンチンの公立大学制度は1949年以来、原則として授業料無償を維持し、中間層の社会的上昇を支える国家的象徴とされてきた。これまでに5人のノーベル賞受賞者を輩出し、南米でも有数の高等教育水準を誇る。一方、慢性的な財政危機と高インフレの中で大学運営は厳しさを増しており、教員給与の実質価値は大きく低下している。

    ミレイ政権は2023年末の発足以来、「放漫財政の清算」を掲げ、大規模な歳出削減を断行してきた。大学予算も対象となり、研究費や施設維持費、人件費が圧縮されている。議会は昨年、インフレ率に応じて大学予算と教員給与を増額する法案を可決したが、政府は財源不足を理由に執行を拒み、違憲性を訴えて司法判断を求めている。この問題は最高裁に持ち込まれる見通しだ。

    大学関係者は予算凍結によって研究者の国外流出や講義縮小が進んでいると警告する。それによると、2023年以降の予算は45%以上減少し、多くの教職員が貧困ライン以下の収入に陥っている。大学病院でも医療資材不足が深刻化し、一部では診療停止の危機が指摘されている。

    デモ参加者の怒りをさらに強めているのが、政権内部の不透明な支出疑惑だ。大統領府の官房長官を巡っては、公的収入と見合わない豪華な支出が報じられ、学生らは「大学に金はないのに、政権には金があるのか」と批判を強めている。

    これに対し政府側は、大学側が政治的目的で危機を誇張していると反論する。大学政策担当の次官は今回のデモを「完全に政治化された左翼ゲリラ運動」と批判し、政府は必要な運営資金をすでに拠出していると強調した。ミレイ氏自身も、大学を「左派的イデオロギーの温床」とたびたび非難している。

    ただ、物価高や失業率上昇に加え、公共サービス削減への不満は国民の間で拡大しており、ミレイ政権の支持率にも陰りが見え始めている。今回の大規模抗議は緊縮改革に対する社会的反発が新たな局面に入ったことを示すものとなった。

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