◎高等選挙裁判所によると、ダシルバ氏は投票率50.9%で激戦を制したという。
2022年10月30日/ブラジル、サンパウロ、大統領選決選投票で勝利したダシルバ元大統領(Andre Penner/AP通信)

ブラジルで30日、大統領選の決選投票が行われ、左派の労働者党(PT)を率いるルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)元大統領が現職の極右ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領を破り、勝利を宣言した。

高等選挙裁判所によると、ダシルバ氏が投票率50.9%で激戦を制したという。

<2022ブラジル大統領選決選投票 開票率100%>
▽ダシルバ 60,343,621票(50.9%)
▽ボルソナロ 58,205,351票(49.1%)
▽無効票 3,930,695票
▽白票 1,769,668票

ボルソナロ氏は敗北を認めていない。

ダシルバ氏は最大都市サンパウロの会場で勝利を宣言し、ボルソナロ氏に投票した有権者を含む全国民のために働くと誓った。

しかし、この選挙が浮き彫りにした分断は消えそうにない。

ダシルバ氏は汚職裁判で有罪判決を受け、1年半以上収監され、2018年の大統領選に出馬できなかったものの、そのカリスマ的な人気は衰えず、中道の一部と左派から支持を集め、カムバックを果たした。

最高裁は事件を担当した当時の判事が偏見を持っていたとして、有罪判決を取り消している。

ダシルバ氏は演説の冒頭、汚職裁判に言及し、「彼らは私を生き埋めにしようとしたが、私はここにいる」と述べ、喝采を浴びた。

<ダシルバ氏の基本情報>
▽77歳
▽左派(中道左派と指摘する専門家もいる)
▽元プレス工(自動車工場勤務)
▽2003~2010年まで大統領
▽2018年に収監も復帰

地元メディアはダシルバ氏が圧勝すると予想していたが、今月2日の第1ラウンドは予想よりはるかに多くの有権者がボルソナロ氏に投票し、ダシルバ氏は過半数を獲得することができなかった。

ボルソナロ氏の支持者は「左翼メディア」が情報を操作し、ボルソナロ氏の支持率を低く見せていると主張。第1ラウンドで世論調査が外れたことを喜び、決選投票で逆転勝利すると完全に信じていた。

またボルソナロ氏はダシルバ氏を「泥棒」と呼び、有罪判決が取り消されたからといって無罪が決まったわけでなく、適切な法的手続きが取られなかったと司法を非難した。

ダシルバ氏は何とか勝利を収めたものの、多くの困難に直面すると予想されている。ボルソナロ氏に近い右派勢力は今月の連邦議会選で過半数を獲得したため、ダシルバ氏は難しい政権を運営を強いられるだろう。

しかし、ダシルバ氏は2003~2010年まで2期大統領を務めたベテラン政治家であり、駆け引きには慣れている。

副大統領にはかつての対立候補である中道右派のアルクミン(Geraldo Alckmin)氏が就任する予定だ。

ダシルバ氏はアルクミン氏を取り込むことで、中道層の支持も獲得した。

ダシルバ氏は勝利演説の中で、「自分に投票した人だけでなく、すべてのブラジル人のために政治を行う」と述べ、分断の解消に取り組むと約束した。

一方、ボルソナロ氏は電子投票に疑問を投げかけ、敗北すれば何かしらの行動を起こすと示唆したこともあった。

しかし、決選投票前日、ボルソナロ氏は「疑惑など微塵もない。より多くの票を得た者が制する。それが民主主義だ」と述べていた。

<ボルソナロ氏の基本情報>
▽67歳
▽右派
▽元陸軍大尉
▽再選を目指していた
▽電子投票システムに疑問を投げかける

高等選挙裁判所は30日、高速道路を管理する警察に対し、道路封鎖と検問をすべて解除するよう要請した。地元メディアによると、有権者を乗せたバスが高速道路で止められたという報告が各地で相次いだという。

ダシルバ陣営は「ボルソナロが投票を阻止しようとしている」と非難したが、ボルソナロ氏はこの主張を払いのけた。

高等選挙裁判所は一部の有権者が立ち往生したものの、投票が妨げられることはなかったとしている。しかし、この事件で緊張が一気に高まった。

ボルソナロ氏とダシルバ氏の投票差はわずか200万票である。一部のアナリストは何かしらの騒動に発展する可能性があると警告している。

この選挙はブラジル国内だけでなく、海外でも注目されており、特に環境活動家はアマゾン開発を推進するボルソナロ氏が再選すれば、取り返しのつかない環境破壊が進むと警告していた。

ダシルバ氏は演説の中で環境問題に言及し、「新政権はアマゾンを守る取り組みに前向きである」と述べた。

またダシルバ氏は人口の6分の1に相当する3300万人以上が食料の確保に苦労していることに触れ、格差を是正すると誓った。

ダシルバ氏が就任した2003年のブラジルのGDP(IMF統計)は約5580億ドル。退陣した2010年は2兆2000億ドル。翌年は2兆2600億ドルまで成長した。

ボルソナロ氏が就任した2019年のGDPは1兆8600億ドル、昨年はコロナ化を乗り越え1兆6000億ドルまで回復した。

2022年10月30日/ブラジル、首都ブラジリアの投票所、ボルソナロ大統領(Bruna Prado/AP通信)
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