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ブラジル大統領訪米へ、関税や犯罪組織への対応が焦点

ルラ氏にとって今回の訪米は、10月の大統領選を前に外交成果を示す機会でもある。
2025年10月26日/マレーシア、首都クアラルンプール、トランプ米大統領(左)とブラジルのルラ大統領(AP通信)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領が8日、米ワシントンDCを訪問し、トランプ(Donald Trump)大統領と会談する。両首脳の正式会談は昨年秋以来で、一時悪化した両国関係の修復に向けた重要な機会になるとみられている。

ブラジルのドゥリガン(Dario Durigan)財務相は6日、公共放送EBCのインタビューで、「この首脳会談の目的はブラジル国民を守り、国家利益を優先しながら建設的な対話を維持することだ」と述べ、今回の訪米に強い期待感を示した。協議では、南米を拠点とする麻薬カルテルや武器密輸組織への対応、情報共有の強化、違法資金の追跡などが主要議題となる見通しだ。

特に焦点となるのは、ブラジル国内で勢力を拡大している犯罪組織PCC(首都第一コマンド)やCV(赤コマンド)を巡る対応である。トランプ政権内ではこれら組織を「外国テロ組織」に指定する案が浮上しているが、ブラジル政府は慎重姿勢を崩していない。ブラジル側には国内犯罪対策への外国の介入が強まることへの警戒感があるためだ。

一方、経済分野では米国の対ブラジル関税が大きな争点となる。トランプ政権は昨年、ブラジル製品に最大50%の追加関税を課し、その理由として、右派のボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領が関与したクーデター未遂事件を巡る司法手続きを挙げていた。これに対しルラ氏は「主権への干渉」と強く反発し、両国関係は急速に冷え込んだ。

その後、トランプ氏は米国内の物価上昇を抑える目的から一部関税を緩和し、対立はやや沈静化した。両首脳は2025年の国連総会やマレーシアでの会談を通じて接触を重ね、関係改善を模索してきた経緯がある。今回の会談は経済摩擦の管理と安全保障協力を両立できるかを占う場になる。

ブラジル側はまた、レアアース(希土類)資源の開発問題についても議論したい考えだ。米国は中国依存を減らすため、ブラジル産レアアースへの関心を強めているが、ブラジル政府は単なる資源輸出国ではなく、自国内で加工・工業化を進めたい方針を示している。

ルラ氏にとって今回の訪米は、10月の大統領選を前に外交成果を示す機会でもある。ただ、国内では議会運営の難航や経済停滞への不満も広がっており、トランプ政権との関係改善がどこまで実利につながるかは不透明だ。会談では友好的な雰囲気が演出される可能性が高いものの、関税や主権問題を巡る根本的な隔たりは依然として残っている。

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