アルゼンチンの牛肉消費量、過去20年で最低水準に、インフレ続く
アルゼンチンは世界有数の牛肉大国として知られ、伝統料理「アサード」は国民文化の象徴とされてきた。
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アルゼンチンの牛肉消費量が過去20年で最低水準に落ち込み、国民食として親しまれてきた牛肉が一般家庭にとって手の届きにくい存在となっている。急激な物価上昇と家計圧迫を背景に、多くの消費者がより安価な鶏肉や豚肉へと食生活を切り替えている。
アルゼンチンは世界有数の牛肉大国として知られ、伝統料理「アサード」は国民文化の象徴とされてきた。しかし、国内の牛肉消費量は急減している。食肉業界団体CICCRAによると、2026年の1人当たり年間牛肉消費量は約44.8キロとなり、20年前の60キロ超から大きく落ち込んだ。これは2000年代初頭の経済危機以来の低水準だという。
背景には深刻なインフレがある。アルゼンチンでは過去の左派政権の政策により、長年にわたりハイパーインフレが続いてきた。2023年末に就任したミレイ(Javier Milei)大統領は急進的な経済改革を推進、補助金削減や通貨切り下げが進み、生活費は一段と上昇した。牛肉価格はこの1年間で60%以上値上がりし、一般家庭の購買力を圧迫している。首都ブエノスアイレスの精肉店では、「以前は週末ごとに牛肉を買っていた客が、今は鶏肉しか買わなくなった」と話す店主もいる。
実際、消費者の食生活は変化している。現在では鶏肉の年間消費量が牛肉を上回りつつあり、豚肉需要も増加している。安価で調理しやすい鶏肉は特に若年層や低所得層を中心に人気が高まっている。かつて「肉といえば牛肉」だったアルゼンチンで、食卓の主役交代が進んでいる形だ。
一方で、輸出市場ではアルゼンチン産牛肉への需要が拡大している。ミレイ政権は輸出規制を緩和し、外貨獲得を優先する政策を進めてきた。特に中国や米国向け輸出が増加し、国内よりも高値で売れる海外市場への供給が優先される傾向が強まっている。これが国内供給不足を招き、さらに価格上昇を加速させているとの指摘もある。
経済学者の間では、牛肉消費減少は単なる嗜好の変化ではなく、国民生活の悪化を示す象徴的な現象だとの見方が広がっている。アルゼンチンでは歴史的に牛肉が豊かさや国民的誇りを象徴してきただけに、その消費低下は社会に大きな衝撃を与えている。政府はインフレ抑制によって将来的な経済安定を目指しているが、多くの国民にとっては、生活苦が続く中で「牛肉を自由に食べられない時代」が現実のものとなっている。
