客室乗務員とパイロット、放射線関連がん死亡リスクで職業別1、2位、高高度飛行による宇宙線に注目
問題となっているのは、宇宙から地球へ降り注ぐ「宇宙線」と呼ばれる電離放射線だ。
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米国の客室乗務員とパイロットは、放射線に関連すると「がん」で死亡する割合が、500を超える職業の中で最も高い水準にあるとの研究結果が発表された。研究はハーバード大学医学部などの研究者が実施し、8月17日に医学誌「JAMA Internal Medicine(ジャマ・インターナル・メディシン)」に掲載された。1200万人を超える米国の死亡証明書を分析した大規模な研究で、航空業界で働く人の職業上の放射線被曝が注目されている。
問題となっているのは、宇宙から地球へ降り注ぐ「宇宙線」と呼ばれる電離放射線だ。地上では大気が放射線の一部を遮っているが、航空機が飛行する高度では大気による防護が弱くなるため、乗務員は地上で働く人より多くの宇宙線にさらされる。航空機を頻繁に利用する乗客にも同じ仕組みが働くものの、長時間かつ繰り返し高高度に滞在するパイロットや客室乗務員では累積被曝量が大きくなる。
今回の研究では、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫のほか、皮膚、乳房、甲状腺、前立腺、中枢神経系など、放射線との関連が知られているがんによる死亡を調べた。その結果、客室乗務員は放射線関連がんによる死亡割合が職業別で最も高く、パイロットが2番目となった。客室乗務員がこうしたがんで死亡する割合は一般の就労人口より約50%高く、パイロットでは約36%高かった。
全体の割合で見ると、客室乗務員の死亡の約6.9%、パイロットの約6.7%が今回対象となった放射線関連がんによるものだった。ただし、この数字は「航空機に乗ることでがんになる確率」を直接示したものではなく、放射線被曝と死亡との因果関係を証明したものでもない点には注意が必要だ。
研究には限界もある。研究者は死亡した個々のパイロットや客室乗務員が、実際にどれほどの放射線を浴びていたのかを把握できていない。また、死亡証明書に記載された職業が正確でない可能性もある。さらに、航空業界特有の不規則な勤務時間、時差、ジェットラグなどによる体内時計の乱れも、がんリスクに影響する可能性があるが、今回の分析では十分に切り分けられていない。
それでも研究者が重視するのは、放射線以外のがんについて客室乗務員やパイロットの死亡率が同様に高かったわけではない点だ。研究に付随する論評では、この結果が生活習慣や社会経済的要因よりも、職業上の放射線被曝が死亡リスクの上昇に関係している可能性を支持すると指摘された。ただし、これはあくまで関連性を示すもので、放射線だけが原因だと断定できるわけではない。
米連邦航空局(FAA)は航空機の乗務員が電離放射線にさらされることを認識している。しかし米国では現在、乗務員について職業上の放射線被曝量に連邦政府が上限を設定したり、個人の被曝量を定期的に監視したりする仕組みが設けられていない。研究者は、測定しなければ被曝を管理することもできないとして、今後の規制や監視体制の必要性を訴えている。
乗務員の労働組合からも、今回の研究を重視する声が出ている。客室乗務員については、定期的な皮膚検査や、女性の場合は乳がん検診をより早期または頻繁に受けることを検討する必要があるとの専門家の提言もある。
今回の研究は、航空旅行そのものを危険視するものではないが、航空業界で長期間働く人については、高高度飛行に伴う宇宙線を職業上のリスクの一つとして認識し、被曝量の把握や健康管理を進める必要性を浮き彫りにした。
