米小売業界でAI価格設定が拡大、消費者に不信感、個人情報利用や価格の公平性に懸念
米国では、スーパーの紙製値札を電子式に置き換える動きが拡大している。

米国の小売業界で人工知能(AI)を活用した価格設定技術の導入が進む一方、消費者の間で不安や不信感が広がっている。電子式値札や需要に応じて価格を変える仕組み、顧客の個人情報を利用して価格を調整する手法などが注目され、同じ商品でも購入者によって価格が異なるのではないかとの懸念が強まっている。
米国では、スーパーの紙製値札を電子式に置き換える動きが拡大している。小売企業は、電子式値札によって価格変更を効率化し、従業員の作業負担を軽減できると説明する。ウォルマートのファーナー(John Furner)CEOは、天候や時間帯、個々の買い物客に応じて値上げするための仕組みではないと強調している。
価格設定を巡っては、需要と供給に応じて価格を上下させる「ダイナミックプライシング」や、位置情報、所得、インターネットの閲覧履歴などを基に価格や割引を変える「個別価格設定」が議論の対象となっている。後者は、個人データの収集や利用への懸念から「監視型価格設定」とも呼ばれる。ただし、電子式値札の導入が直ちに頻繁な値上げにつながるわけではなく、食料品や一般小売店で航空券や配車サービスのような時間単位の価格変更は、現状では極めてまれだと業界関係者は指摘する。
AIは販売実績や競合他社の価格などを分析し、需要を予測して利益や販売量の最大化につながる価格を提案する。調査会社サイモン・クチャーの調査では、28カ国・39業種の企業幹部2200人超のうち、41%が市場情報の収集にAIを利用し、28%がリアルタイムの価格最適化に活用していると回答した。
一方、米連邦取引委員会(FTC)は、個人データを使って顧客ごとに価格を設定する場合、その利用を適切に開示しなければ消費者保護法に違反する可能性があると警告している。少なくとも30州で、アルゴリズムや個人情報を用いた価格設定を規制する法案が検討されている。
AIによる効率化への期待がある一方、価格決定の透明性と消費者の信頼をどう確保するかが、小売業界の課題となっている。
