◎ロシア軍は各地のエネルギーインフラにミサイルを撃ち込んでいるとみられる。
2022年11月17日/ウクライナ、首都キーウの通り、ロシア軍の戦車と市民(Andrew Kravchenko/AP通信)

ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は17日、ロシア軍の新たなミサイル攻撃による計画停電と予告なしの停電が続き、1000万人以上が影響を受けていると明らかにした。

大統領府によると、直近24時間のロシア軍による攻撃で民間人少なくとも7人が死亡、20人以上が負傷したという。

ロシア軍は各地のエネルギーインフラにミサイルを撃ち込んでいるとみられる。

ゼレンスキー氏は17日に公開した動画で、「電力供給を正常化する取り組みが続いている」と説明した。

またゼレンスキー氏は巡行ミサイル6発とドローン5機を防空システムで撃墜したと述べた。

南部ザポリージャ州のウクライナ当局によると、集合住宅にミサイルが直撃し、民間人少なくとも7人が死亡したという。

ウクライナ軍は東部のガス生産施設とミサイル工場も狙われたと報告している。

停電に見舞われたのは首都キーウや南部オデーサ州など。ウクライナと国境を接するモルドバでもウクライナの送電線が破損したことによる停電が続いているようだ。

ゼレンスキー氏は「ロシア軍は電力と熱を奪い、ウクライナ人を凍死させようとしている」と非難した。

またゼレンスキー氏は同盟国にウクライナの領空を守るよう改めて要請した。

ウクライナ公共放送によると、ザポリージャ州の北に位置する中部ドニプロも新たな攻撃の標的になったという。シュミハリ(Denys Shmyhal)首相はこの地域にあるミサイル工場が攻撃を受けたと報告した。

大統領府はドニプロだけで10代の若者を含む少なくとも23人が重軽傷を負ったと報告している。

ザポリージャ州の南西に位置するニコポルには砲弾少なくとも70発が着弾し、数千戸で停電と断水が発生したと伝えられている。

国営エネルギー企業ナフトガスは17日、東部のガス生産施設が大規模攻撃を受けたと報告した。

南部オデーサ州と東部ハルキウ州でもインフラが攻撃を受け、民間人が死傷したという。

初雪を観測した首都キーウでは空襲警報が鳴り響いた。政府は現地時間午前8時頃、住民の携帯にメッセージを送った。

キーウ市長によると、防空システムが機能し、巡行ミサイル4発とイラン製自爆ドローン5機を撃墜したという。

市内の住民は15日の大規模攻撃に続くロシア軍のミサイル乱射に警戒心を強めている。

AP通信の取材に応じた女性は、「常に壁の近くを歩くよう心掛けている」と述べた。

西側の専門家やシンクタンクによると、15日のミサイル攻撃の規模は2月24日の開戦以来、最大とみられる。

この大規模攻撃の中でウクライナの隣国ポーランド領内にミサイルが飛び込み、市民2人が死亡。NATO加盟国で侵攻に関連する死者が出たの初めてである。

ゼレンスキー氏はポーランド領内に着弾したミサイルについて、ロシアが発射したものと繰り返し主張しているが、米国、NATO、ポーランドはウクライナの防空システムの可能性が高いと指摘している。

ポーランド政府は17日、ウクライナ当局の事故現場への立ち入りを認める可能性が高いと報告した。同政府は米国などと協力して原因を究明するとしている。

NATO事務総長もウクライナの防空システムの可能性が高いとする一方、「悪いのは戦争を始めたロシアであり、その責任はロシアが負う」と指摘した。

米国も同様の見解を示している。

ウクライナ軍はロシア軍が15日に発射したミサイルの大半を撃墜したと報告しているが、電力インフラを完全に守ることはできなかった。

キーウの冬場の気温は日中でも0度に届かないことが多い。住民は17日、インフラ攻撃の影響を肌で感じた。

国営電力会社ウクルエネルゴ社は16日、予告なしの停電を行う可能性があると警告し、その通りになった。多くの住民が暖房を入れられずにいる。

米軍の制服組トップであるミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長は16日、ウクライナが短期間でロシア軍に勝利する可能性は低いと警告した。

ウクライナではこの数日、南部ヘルソン市の奪還に成功したことで、楽観的な見方が広がっていた。

ウクライナ政府は17日、ヘルソン市内で「おぞましい」規模の拷問が行われていたことが明らかになったと報告した。

市内には多くの拷問部屋が設置され、市民が拷問を受けた証拠が多数見つかったという。

一方、トルコとウクライナ政府は同日、南部の穀物輸出合意が120間延長されたと発表した。期限は11月19日だった。ロシア外務省も声明で延長を認めている。

国連によると、ウクライナ南部から輸出された穀物はこの数カ月で1100万トンに達し、世界の食料価格と食料安全保障に対する懸念の緩和に大きく貢献したという。

2022年11月17日/ウクライナ、南部ヘルソン市の広場、スマホを充電する人々(Efrem Lukatsky/AP通信)
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