イギリス政府、ロシア産原油に対する制裁緩和、燃料価格高騰で苦渋の決断
イギリスはウクライナ支援の主要国として対ロシア制裁を強く推進してきたが、国内経済への打撃を抑えるため、一部制裁の導入延期に踏み切った形だ。
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イギリス政府がロシア産原油に対する新たな制裁措置の一部を事実上緩和したことが明らかになり、国内外で波紋を広げている。背景には、米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦と、それに対抗するイラン側のホルムズ海峡封鎖によって世界的な原油供給不安が拡大し、燃料価格が急騰している事情がある。
イギリスはウクライナ支援の主要国として対ロシア制裁を強く推進してきたが、国内経済への打撃を抑えるため、一部制裁の導入延期に踏み切った形だ。
今回発効した特別貿易ライセンスでは、ロシア産原油をインドやトルコなど第三国で精製したジェット燃料やディーゼル燃料について、イギリスへの輸入を認める内容となっている。
スターマー政権は昨年10月、こうした製品の輸入禁止を打ち出していたが、原油市場の混乱を受けて実施を先送りした。ホルムズ海峡は世界の石油輸送の2割が通過する重要航路であり、イランの封鎖によって国際市場では供給不足への懸念が急速に高まっている。ジェット燃料不足も深刻化し、欧州各国では物流や交通への影響が広がり始めている。
スターマー(Keir Starmer)首相は20日、議会でこの措置について、「制裁を撤回するわけではなく、段階的導入のための短期的措置だ」と説明し、イギリスの対ウクライナ支援方針は変わらないと強調した。財務次官も「極めて限定的かつ一時的な対応」であると説明し、国内の生活費高騰から消費者を守る必要があると訴えた。一方で、ライセンスに明確な終了期限は設けられておらず、政府は「状況を注視し、内容を定期的に見直す」と説明するにとどまっている。
これに対し、野党・保守党は「政府が“汚れたロシア産石油”を購入する道を選んだ」と批判した。さらに、与党・労働党内からも懸念の声が上がり、下院外交委員長のソーンベリー(Emily Thornberry)議員は、「ウクライナは深く失望するだろう」と指摘、ロシアの石油収入を削る圧力を維持すべきだと主張した。地元メディアも「対ロ制裁の象徴的後退」として政府判断を問題視している。
一方、米国もロシア産原油への制裁を一部猶予し、海上輸送中のロシア産原油購入を30日間認める措置を導入した。G7は「ロシアへの圧力維持」を確認したものの、イラン戦争によるエネルギー危機が西側諸国の対ロ制裁体制を揺さぶっているのは明らかだ。原油価格の高騰が長期化すれば、欧州各国でも同様の制裁緩和論が広がる可能性があり、ウクライナ支援とエネルギー安全保障の両立が大きな課題となっている。
