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イギリス保健相が辞任、スターマー首相への退陣圧力強まる

背景には先週行われた統一地方選での労働党惨敗がある。
イギリスのスターマー首相(Getty Images)

イギリスのスターマー(Keir Starmer)首相が深刻な政治危機に直面している。ストリーティング(Wes Streeting)保健相は14日、内閣を辞任し、スターマー氏への不信感をあらわにした。ストリーティング氏は辞表の中で「世界情勢では指導力を示したが、国内政治には空白と漂流がある」と批判し、首相が次期総選挙まで与党・労働党を率いるべきではないと主張した。今回の辞任は労働党内で高まる「スターマー降ろし」を象徴する動きと受け止められている。

背景には先週行われた統一地方選での労働党惨敗がある。2024年総選挙で14年ぶりに政権奪還を果たした労働党だったが、物価高や公共サービス改善の遅れへの不満が噴出し、多くの自治体で議席を失った。特にファラージ(Nigel Farage)党首率いる右派政党「リフォームUK」の躍進が与党に衝撃を与え、党内では「スターマー体制では次の総選挙を戦えない」との声が急速に強まっている。

ストリーティング氏は43歳。労働党中道路線を代表する若手実力者で、国民保健サービス(NHS)改革を主導してきた。救急車到着時間短縮や診療待機患者削減など一定の成果を挙げた一方、医師ストや医療費削減策を巡っては批判も受けてきた。貧困家庭出身で、自らの努力で政界入りした経歴から支持率も高く、以前から「将来の党首候補」と目されていた。

ただし、ストリーティング氏が直ちに党首選へ出馬するかは不透明だ。労働党規則では、党首選実施には下院労働党議員403人中81人の推薦が必要である。報道によると、ストリーティング氏の陣営は必要人数確保に動いているものの、党左派からの警戒感は強い。

党内では他にも有力候補が浮上している。レイナー(Angela Rayner)前副首相は税務問題を巡る混乱収束後、党首選出馬に含みを持たせている。また、マンチェスター市長のバーナム(Andy Burnham)氏は、下院補欠選挙を通じた政界復帰の可能性が報じられており、党内融和型候補として注目を集める。さらにミリバンド(Edward Samuel Miliband)氏や若手のカーンズ(Al Carns)氏の名前も取り沙汰されている。

これに対しスターマー氏は辞任要求を拒否し、「党首選挙は政府を混乱に陥れるだけだ」と反論している。英国経済は2026年第1四半期(1~3月)に0.6%のプラス成長を記録したが、生活費高騰への国民不満は根強く、政権支持率は低迷している。中東情勢や欧州安全保障問題への対応も重なり、政権運営は厳しさを増している。

労働党は歴史的に政権中の党首交代を避ける傾向が強い。しかし今回の危機は、政権発足からわずか2年足らずで発生した異例の事態であり、今後数週間がスターマー政権存続の分水嶺となる可能性が高まっている。

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