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韓国サムスン電子、深刻な労使対立に直面、大規模ストも

世界的なAI競争の最前線に立つサムスンは技術競争だけでなく、社内の分断と労使対立という課題にも直面している。
韓国の電機大手サムスン電子のロゴ(ロイター通信)

韓国の電機大手サムスン電子が人工知能(AI)ブームの恩恵を受ける一方で、深刻な労使対立に直面している。AI向け半導体需要の急拡大によって業績は急回復しているが、部門間の待遇格差や成果配分を巡る不満が噴出し、大規模ストライキの可能性が高まっている。

同社の労組である全国サムスン電子労働組合(NSEU)は会社側との賃金交渉が決裂したことを受け、5月下旬からの全面ストを計画している。実施されれば、創業以来最大規模の争議行為となる見通しだ。労組側はAI関連事業の急成長によって生まれた利益が一部部門や経営陣に偏っていると主張し、賞与制度の見直しや基本給引き上げを求めている。

現在、サムスンの業績を牽引しているのは、高帯域幅メモリー(HBM)などAI向け先端メモリー半導体事業である。生成AI向けサーバー需要の急増により、同社のメモリー部門は大幅増益となった。特に米AI企業向け供給が拡大し、半導体部門利益は前年同期比で急増した。一方、スマートフォン向け半導体やファウンドリー(半導体受託生産)部門は依然として収益性が低く、部門間で賞与水準に大きな差が生じている。

組合員の間では「同じ会社で働きながら待遇が極端に異なる」との不満が強まっている。ロイター通信によると、一部のAI関連部門では年俸の数10%規模の成果給が支払われる一方、不振部門では大幅に抑制されたケースもあるという。これが社内の分断を深めている。

背景には、韓国半導体業界全体を覆う競争激化がある。ライバルのSKハイニックスはAI向けHBM市場で先行し、米エヌビディア向け供給を拡大している。サムスンは巻き返しを急ぐため巨額投資を続けているが、その負担が賃金抑制につながっているとの見方もある。

また、サムスンは長年「無労組経営」で知られてきた。しかし、近年は労組加入者が急増し、従業員の権利意識も変化している。2024年には初の本格ストが実施され、労使関係は新たな局面に入った。AIブームによる利益拡大が、逆に従業員の不公平感を刺激する形となっている。

韓国政府も事態を注視している。半導体は韓国経済の中核産業であり、サムスンの生産混乱は輸出や世界的サプライチェーンに影響を及ぼす可能性があるためだ。市場では、もし長期ストに発展すればAI向け半導体供給にも支障が出るとの懸念が広がっている。

世界的なAI競争の最前線に立つサムスンは技術競争だけでなく、社内の分断と労使対立という課題にも直面している。AI時代の巨大企業に求められる利益配分の在り方が改めて問われている。

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