◎ウクライナ軍の拠点アゾフスターリ製鉄所は5月に陥落した。
2022年5月5日/ウクライナ、南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所(Evgeniy Maloletka/AP通信)

ウクライナ東部ドネツク州当局は23日、ロシア軍が港湾都市マリウポルの戦争犯罪を隠蔽しようとしていると非難した。

マリウポリとそこにあるアゾフスターリ製鉄所は侵攻初期の激戦地であり、現在はロシア軍の支配下に置かれている。

マリウポリのアンドリュシチェンコ(Petro Andryushchenko)市長顧問はウクライナ公共放送のインタビューで、「ロシア軍は3月に爆撃した市内の劇場を更地にしようとしている」と語った。

この劇場は3月16日の空爆で崩壊し、劇場内に避難していた民間人数百人が巻き込まれたとされている。

ロシア国営メディアも劇場で解体作業が進んでいると報じた。

アンドリュシチェンコ氏は、「ロシア軍は劇場の正面以外を解体し、市民の遺体の上に新しい劇場を建設するつもりだ」と語った。

ロシア国営メディアによると、劇場周辺には先月大型スクリーンが設置され、ロシアの文化などを紹介する映像が流されるようになったという。

この劇場はマリウポリの中心部に位置し、街を象徴する建物のひとつだった。

ドネツク州のロシア当局は占領後、マリウポリの住民に新たな娯楽を提供すると約束した。

アンドリュシチェンコ氏によると、ロシアは新年を祝うイベントとして、1960年代にソ連で公演された「ブレーメンの音楽隊」のリバイバル公演を劇場近くの宮殿で行う予定だという。

破壊された劇場では1年前、華やかなイベントが開催された。

AP通信によると、ロシア軍はマリウポリ市内に新しい墓を少なくとも1万300基作ったという。

またロシア軍は先月、この劇場からウクライナの市民とみられる遺体を収容し、埋葬するためにどこかに持ち去ったと報じられた。

ウクライナ政府はマリウポリだけで市民2万5000人が死亡したと推定している。

ロシア軍はマリウポリ包囲に数カ月を要した。ウクライナ軍の拠点アゾフスターリ製鉄所は5月に陥落した。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、ロシア軍は3月16日、劇場に500kg爆弾を2発投下したという。西側諸国はこの攻撃も戦争犯罪と糾弾している。

市内の住民数百人が劇場内に身を寄せ、劇場前にはロシア語で「子供たち」と書かれた大きな看板が置かれていた。

ウクライナ政府は劇場内に避難していた市民を1200人と推定し、そのうち少なくとも300人が死亡したとみている。

2022年5月10日/ウクライナ、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所内(Dmytro Kozatsky/Azov Special Forces Regiment of the Ukrainian National Guard Press Office/AP通信)
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