◎ロシア軍の兵士推定90,000人はウクライナ東部の反政府勢力が支配する地域(ドネツクとルハンシク)に駐留している。
2021年11月3日/デンマーク、首都コペンハーゲンの政府庁舎、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(Getty Images/AFP通信)

11月15日、NATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はロシアがウクライナ近郊の兵力を増強していることに懸念を示したが、現時点でロシアのウクライナ侵攻は想定していないと述べた。

ロシアは2014年にウクライナのクリミア半島を併合し、クリミアを「自国の領土」と宣言したが、国際社会はこれを認めていない。

その後、クリミアの北東部に位置するドネツクとルハンシクの分離主義者はウクライナからの独立を宣言した。ロシアはドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認したが、国際社会とウクライナは分離主義者をテロリストと見なし、非難した。

ウクライナ東部で進行中のドンバス戦争は2015年の停戦協定ミンスクⅡの締結以来、大きな戦闘は報告されていないが、小競り合いは続いている。ウクライナ当局によると、2020年のウクライナ軍の死亡者は50人、2021年第1四半期の死亡者は25人。

米国はロシア軍の動向を注視するようEUに警告したが、ストルテンベルグ事務総長はロシアはすぐに行動を起こすとは思わないと述べ、緊張を緩和することが重要と強調した。ロシア軍はウクライナとの国境沿いの兵力を90,000人規模に増強したと伝えられている。

ストルテンベルグ事務総長はウクライナ外相との会談後、記者団に対し、「ロシアに軍事活動の透明性を高めるよう求める」と述べた。「緊張を緩和することが最も重要です...」

またストルテンベルグ事務総長は2014年のクリミア併合を引用し、「兵力増強がウクライナに対する攻撃的な行動につながったことを私たちは知っている」と述べ、ロシアをけん制した。

ウクライナの国防省によると、ロシア軍の兵士推定90,000人はウクライナ東部の反政府勢力が支配する地域(ドネツクとルハンシク)に駐留しているという。また、ロシア軍第41部隊は、ウクライナ北部国境の北約260kmに位置するエリニャと呼ばれる町にとどまっていることも明らかになった。

ウクライナのドミトロ・クレーバ外相は記者団に、「全てのシナリオに備える必要がある」と述べ、NATOに支援を求めた。

一方、ドイツとフランスの外相は15日に発表した共同声明の中で、ロシアに軍事行動を取らないよう警告した。「ウクライナの領土を侵害する新たな試みは深刻な結果をもたらすだろう...」

ウクライナ軍は先月、反政府勢力に占領された地域周辺でトルコ製軍用ドローンの運用を開始した。ドローンは最初の任務で反政府勢力の大砲を破壊したと伝えられている。和解交渉を仲介しているドイツとフランスはドローン爆撃を非難した。

ロシアも爆撃を非難し、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国に対する攻撃は「停戦中のドンバス戦争を不安定化させる可能性がある」と警告した。

2021年5月6日/ウクライナ東部ドネツクに設置された塹壕(AP通信/Felipe Dana)
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