◎ノーベル委員会は8日、ロシアで活動するジャーナリストのドミトリー・ムラトフ氏とフィリピンのマリア・レッサ氏にノーベル平和賞を授与すると発表した。
2021年10月8日/ロシア、首都モスクワ、ノーベル平和賞を受賞したジャーナリストのドミトリー・ムラトフ氏(Getty Images/AFP通信)

10月8月、ロシア政府は独立系ジャーナリストがノーベル平和賞を受賞してから数時間後、複数のジャーナリストと独立系メディアを「外国エージェント」に指定した。

外国エージェントという言葉は旧ソビエト時代に広く利用されていた。

ロシアはウラジーミル・プーチン大統領に敵対する組織や個人、外国から資金提供を受けていると見なされるメディアやNGOを今でも外国のエージェントと呼び、監視下に置いている。

ノーベル委員会は8日、ロシアで活動するジャーナリストのドミトリー・ムラトフ氏とフィリピンのマリア・レッサ氏にノーベル平和賞を授与すると発表した。

ムラトフ氏はノーベル委員会に「ロシアで最も民主的な新聞」と呼ばれたノーヴァヤ・ガゼータ社の創設者のひとりである。

ノーベル委員会のベリット・ライシュ・アンデルセン議長は声明で、「二人は民主主義と報道の自由が脅かされる現在の世界で理想を追求するすべてのジャーナリストの代表」と述べ、称賛した。

ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は8日の記者会見でムラトフ氏を「才能のある勇敢な人物」と呼び、称賛した。「彼は理想を求め、実直に働いてきました...」

しかし、ロシアの法務省は8日、新たに9人のジャーナリストと独立系メディア3社を外国エージェントのリストに追加すると発表した。現地メディアによると、アレクセイ・ナワルニー氏を支援するイギリスの調査報道組織ベリングキャット、アメリカに本拠を置くエム・ニュース・ワールド、コーカサス地域で活動するコーカサス・ノット、英BBCニュースのジャーナリストなどがリストに追加されたという。

外国エージェントに指定された個人は半年に1回、活動と財務の記録を当局に提出するよう求められる。活動記録にはニュースサイトに投稿した記事、写真、フェイスブックやツイッターへの投稿も含まれる。

ロシアは2017年の法改正で政府に批判的な個人、国内の独立系メディア、外国メディアを外国エージェントに指定できるようにした。この法律は、ロシアの支援を受ける半国営メディアのRT(旧ロシア・トゥディ)がアメリカで外国エージェントに指定されたことを受け施行された。

モスクワで活動する政治アナリストのアッバス・ガリヤモフ氏はAP通信の取材に対し、「ロシア当局はムラトフ氏のノーベル平和賞受賞にイラついています」と語った。「プーチン大統領は言論の自由と独立ジャーナリズムの原則を悪と見なし、引き続き厳しく取り締まるでしょう」

ムラトフ氏はノーヴァヤ・ガゼータ社の外で記者団の取材に応じ、「倒れた同僚の活動が評価されたことをうれしく思います」と述べた。同社は創刊以来、6人のジャーナリストを紛争地の取材などで失っている。

ムラトフ氏は記者団に、「この賞はチェチェンで発生したロシアの血なまぐさい紛争を報道したアンナ・ポリトコフスカヤを含む、殺されたジャーナリストに対する賞だと思っています」と述べた。

またムラトフ氏は、平和賞の有力候補と予想されていたロシアの野党指導者ナワルニー氏を称賛し、「私がノーベル委員会の投票に参加していれば、ナワルニー氏に投票したでしょう」と述べた。

ジャーナリスト保護委員会によると、フィリピンで過去10年の間に殺害されたメディア関係者は17人、ロシアでは23人が殺害されたという。

一方、ノーベル委員会の当局者は過去10年で世界最悪と考えられている致命的なティグライ危機を引き起こしたエチオピアのアビィ・アハメド首相に2019年に平和賞を受賞したことを記者から質問され、うなだれた。「今日、委員会は他のノーベル賞受賞者や他の問題についてコメントしませんが、エチオピアの報道の自由の状況は悲惨であり、ジャーナリズムは厳しい現実に直面しています...」

ティグライ地域の住民600万人はエチオピア軍と地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の紛争に巻き込まれ、数千人が死亡し、数万人が国外に逃亡し、数百万人が国内避難民になった。アビィ首相は国連や人道団体の支援輸送を妨害しており、厳しく非難されている。

国連は、子供を含むティグライ地域の住民40万人以上が餓死もしくは栄養不足がまねく病気で死亡する可能性があると警告した。

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