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欧州の石油・ガス価格、2027年末まで高止まりする見通し

エネルギー価格の高止まりは欧州経済全体にも重荷となっている。
2026年5月22日/キプロス、首都ニコシア、ユーログループの財務相会合後の記者会見(AP通信)

欧州連合(EU)のエネルギー当局者は22日、天然ガスや石油の価格が少なくとも2027年末までは高止まりするとの見通しを示した。ロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州はロシア産エネルギーへの依存からの脱却を進めているが、代替供給の確保や中東情勢の緊迫化などが重なり、エネルギー市場の不安定な状況が長期化する可能性が高まっている。

EUの執行機関である欧州委員会のエネルギー担当高官らは、EU加盟国のエネルギー相会合で、今後数年間にわたりガス価格は危機前の水準には戻らないとの認識を示した。背景には、ロシア産天然ガスの供給縮小がある。かつてEUは天然ガス輸入の約4割をロシアに依存していたが、戦争開始後、ロシアは供給を大幅に削減した。これにより欧州は液化天然ガス(LNG)の輸入拡大や再生可能エネルギー導入を急いでいるが、調達コストは依然として高い。

また、米国・イスラエルとイランの対立をはじめとする中東情勢の悪化も、石油市場に不透明感を与えている。中東地域は世界有数の原油供給地であり、軍事衝突や海上輸送への脅威が悪化すれば、原油価格は急騰しかねない。実際、欧州では最近数週間で原油価格が再び上昇傾向にあり、ガソリンや暖房費への影響が懸念されている。

エネルギー価格の高止まりは欧州経済全体にも重荷となっている。特にドイツやイタリアなど製造業への依存度が高い国では、電力やガス料金の上昇が企業収益を圧迫している。化学、鉄鋼、自動車産業などエネルギー集約型産業では、生産拠点を米国やアジアへ移す動きも出ている。欧州中央銀行(ECB)はインフレ抑制のため高金利政策を続けているが、エネルギー価格の高騰が物価上昇を長引かせる要因になっている。

一方、EU側は再生可能エネルギーへの転換を加速させる方針を強調している。太陽光発電や風力発電への投資拡大に加え、水素エネルギーや省エネ政策を進めることで、長期的に化石燃料依存を減らす考えだ。しかし、新たなインフラ整備や送電網の拡張には巨額の投資と時間が必要であり、短期間で価格を安定化させるのは難しいとの見方が強い。

EU加盟国の間では、家計や企業への支援策をめぐる議論も続いている。各国政府は補助金や電気料金の上限制導入などを行ってきたが、財政負担が増大している。専門家の間では、「エネルギー危機は一時的な異常事態ではなく、新たな常態になりつつある」との指摘も出ている。欧州は今後数年間、高コストへの適応を迫られることになりそうだ。

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