フランス国民議会、安楽死法案を採決へ
対象となるのはフランス国籍または同国に居住する成人で、不治の病により生命が脅かされ、治療では緩和できない苦痛を抱える患者に限られる。
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フランス国民議会(下院)は15日、終末期医療における「医師による自殺幇助」を合法化する法案の最終審議を行った。同法案は回復の見込みがなく生命を脅かす病気を患い、耐え難い身体的または心理的苦痛に苦しむ成人に対し、厳格な条件の下で自らの意思に基づく死を選択する権利を認めるもので、フランスの生命倫理政策を大きく転換する歴史的な法案として注目を集めている。
法案では、対象となるのはフランス国籍または同国に居住する成人で、不治の病により生命が脅かされ、治療では緩和できない苦痛を抱える患者に限られる。申請は本人の自由意思に基づくことが条件で、複数の医師による審査や一定の熟慮期間を経た上で認められる。患者は致死性の薬剤を自ら投与することを原則とするが、身体的理由で自力投与が不可能な場合には、医師や看護師が投与を補助できると規定している。また、医療従事者には良心的拒否権が認められ、制度への参加を望まない場合でも、対応可能な医療機関や医師を紹介する義務を負う。
この法案をめぐっては、数年にわたり政治・医療・宗教界を巻き込む激しい議論が続いてきた。支持派は、治療法のない病に苦しむ患者が人生の最期を自ら決定する権利を保障し、人間としての尊厳を守る制度だと主張する。世論調査でも回答者の8割以上が制度導入を支持しており、高齢化が進むフランス社会で終末期医療の在り方を見直すべきとの声が広がっている。一方で、カトリック教会や一部の医療関係者、生命倫理団体などは、制度が社会的弱者や高齢者に心理的圧力を与える可能性があるほか、緩和ケアの充実こそ優先すべきだとして反対している。
法案は上院で否決されたものの、最終的決定権を持つ下院で可決されれば、フランスはオランダやベルギー、ルクセンブルクなどに続き、一定条件下で医師幇助による死を認める欧州諸国の一つとなる。もっとも、法律の施行に向けては憲法評議会による合憲性審査を通過する必要があり、その判断が今後の焦点となる。法案の行方は、生命の尊厳と自己決定権のバランスをいかに取るべきかという、現代社会共通の課題を改めて問いかけるものとなっている。
