フランス国民議会が安楽死法案を可決、患者の自己決定権と尊厳を尊重する制度設計
法案はマクロン大統領が3年前に公約として掲げた終末期医療改革の柱であり、長年にわたる政治的・倫理的議論を経て実現した。
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フランス国民議会(下院)は15日、回復の見込みがない重い病気に苦しむ患者を対象に、医師の管理下で死を選択することを認める「尊厳死(医師による自殺幇助)」法案を賛成291ー反対241で可決した。
法案はマクロン(Emmanuel Macron)大統領が3年前に公約として掲げた終末期医療改革の柱であり、長年にわたる政治的・倫理的議論を経て実現した。今後、憲法評議会による審査を経て施行される見通しである。
法案では、対象者を18歳以上のフランス国民または合法的な居住者とし、不治で生命を脅かす病気が進行・終末期にあり、耐え難い身体的または精神的苦痛を抱えていることなど、複数の厳格な条件を満たす必要がある。
患者は十分な判断能力を有し、自らの意思で自由かつ明確に希望を表明しなければならない。医師による診断や複数の専門家による確認、一定期間の熟慮期間を経たうえで、最終的な意思確認が行われるなど、慎重な手続きが義務付けられている。
致死性薬剤は原則として患者本人が投与する。ただし、身体機能の低下などで自ら投与できない場合に限り、医師または看護師が補助することが認められる。また、医療従事者には良心的拒否権が保障され、実施を望まない場合は関与を拒否できる一方、患者を対応可能な医療従事者へ紹介する義務を負う。法案は安楽死の乱用を防ぎつつ、患者の自己決定権と尊厳を尊重する制度設計を目指している。
法案を支持する人々は、治癒の見込みがない患者が自らの人生の最期を選択できることは人間の尊厳を守るために必要だと主張する。世論調査でも回答者の8割が制度導入に賛成しており、高齢化の進展や医療技術の発達によって終末期医療の在り方を見直す機運が高まっていた。
一方、医療関係者や宗教団体、一部の野党議員は、弱い立場の患者が家族や社会に負担をかけたくないとの思いから死を選ぶよう圧力を受ける恐れがあると懸念を示し、苦痛の定義や適用基準の曖昧さも問題視している。
フランスではこれまで延命治療の中止や終末期の深い鎮静措置は認められていたものの、医師による自殺幇助を認める制度は存在しなかった。今回の法案成立は終末期医療に関する国家の姿勢を大きく転換する出来事と位置付けられる。尊厳死を巡る議論はイギリスやドイツなど欧州各国でも続いており、フランスの新たな制度は今後の国際的な議論にも影響を与える可能性がある。
