ルーマニア大統領選決選投票、親EU派が「歴史的」大逆転、極右破る
▽開票率99.9%時点でダン氏の得票率は54%、シミオン氏は46%。投票率はこの25年間で最高となった。
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ルーマニアで18日に行われたやり直し大統領選決選投票で、親欧米派のニクソル・ダン(Nicusor Dan、55歳)氏がルーマニア統一連盟(AUR)の極右シミオン(George Simion)氏に勝利した。
選挙管理委員会によると、開票率99.9%時点でダン氏の得票率は54%、シミオン氏は46%。投票率はこの25年間で最高となった。
ダン氏は首都ブカレストの市長を務め、先月の第1回投票でシミオン氏に大差をつけられたが、この1カ月で支持率を一気に伸ばし、逆転勝利を収めた。
ダン氏は横行する汚職と闘い、ルーマニアが重要な後方支援の役割を果たしてきたウクライナへの支援を継続し、ルーマニアを欧州の主流にしっかりと位置づけることを公約に掲げて選挙戦を戦った。
2週間前の投票ではシミオン氏が得票率41%で圧勝。2位のダン氏は約20%、与党候補のアントネスク(Crin Antonescu)氏は決選投票に進めなかった。
ダン氏の支持者は18日午後、ブカレストの会場で「ロシアよ、忘れるな、ルーマニアはお前のものではない 」と連呼し、ダン氏の勝利を願った。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領は18日、ダン氏の勝利を「歴史的」と称賛。祝意を表し、SNSにこう書きこんだ。「隣国であり友人であるウクライナにとって、ルーマニアが信頼できるパートナーであることは重要だ」
一部のEU諸国はこの結果がEUとNATO加盟国の地政学的方向性を再編成する可能性があると警告していた。
またアナリストたちもシミオン氏が勝利すればルーマニアは孤立し、民間投資を減退させ、NATOの東側を不安定にする可能性があると指摘してきた。
シミオン氏は「ルーマニア・ファースト」を公約に掲げ、保守的な政策、ユーロ懐疑主義、トランプ(Donald Trump)米大統領のMAGA運動との緊密な連携を提唱してきた。
4日の選挙はルーマニア国民の強い反体制感情を浮き彫りにし、伝統的な主流政党に厳しい現実を突きつけた。ルーマニアを含むEUでは極右政党が躍進し、政治的混乱が拡大している。
シミオン氏は自身が勝利した場合、昨年の大統領選第1回投票で勝利した極右ジョルジェスク(Calin Georgescu)氏を要職に起用すると示唆していた。
地元メディアは「反トランプ感情が親ロシア派を上回った」と報じている。
憲法裁は昨年12月、大統領選第1回投票の結果を無効と判断し、ジョルジェスク氏の決選投票進出に待ったをかけた。
憲法裁は人工知能(AI)を含むデジタル技術の違法な使用や、未申告の選挙資金が使用されたと指摘。また、ジョルジェスク氏がソーシャルメディア・プラットフォームで「優遇措置」を受け、その結果、有権者の意思表示が歪められたとしている。
また憲法裁は「ロシアの介入が疑われる」と指摘した。
選管は先月初め、ジョルジェスク氏のやり直し大統領選への立候補を拒否。ジョルジェスク氏は憲法裁に異議を申し立て、この決定を覆すよう求めた。
しかし、憲法裁はジョルジェスク氏の訴えを退けた。
ジョルジェスク氏は最近、自身が要職に就いた場合、国内のエネルギー企業を全て国有化すると主張し、投資家の不安を煽った。
一方、情報機関はジョルジェスク氏の陣営がティックトックのユーザーに36万1000ユーロの報酬を支払い、ジョルジェスク氏のコンテンツを宣伝させたと主張。ジョルジェスク氏は自身の選挙活動費をゼロと公言していた。
捜査当局はジョルジェスク氏が公職選挙法に違反した疑いがあるとみて捜査している。