◎アクレ氏は今月11日、ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍の急襲作戦を取材中に被弾、死亡した。
2022年5月26日/ヨルダン川西岸、パレスチナ自治政府の司法長官(左)と報道官(Majdi Mohammed/AP通信)

パレスチナ自治政府は26日、ヨルダン川西岸地区でアルジャジーラのジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレ(Shireen Abu Aqleh)氏が射殺された事件の調査結果を公表した。

司法長官は記者団に対し、「イスラエル軍は逃げようとしたアクレ氏を故意に撃ち殺した」と語った。自治政府は2週間前に公表した初期調査結果でも同様の見解を示していた。

イスラエルのガンツ(Benny Gantz)国防相は26日、パレスチナの主張を「あからさまな嘘」と一蹴した。

パレスチナ系米国人のアクレ氏は今月11日、ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍の急襲作戦を取材中に被弾、死亡した。

目撃者やパレスチナ当局者は、イスラエル軍が故意にアクレ氏を撃ったと主張している。

イスラエル政府はこの主張を否定し、アクレ氏はパレスチナ人武装勢力とイスラエル軍兵士の戦闘に巻き込まれ、流れ弾に当たった可能性が高いと指摘している。

イスラエルはアクレ氏から摘出された弾丸とその他の証拠を共有するよう求めているが、パレスチナは証拠を隠滅される恐れがあるとしてこれを拒否している。

司法長官は記者団に対し、「アクレ氏が撃たれた現場付近に武装勢力はいなかったと判断した」と語った。「当時、現場周辺にいたのは占領(イスラエル)軍だけでした」

アルジャジーラによると、アクレ氏はプレス(報道)と書かれたヘルメットと防護ベストを着用し、他のジャーナリストやカメラマンと一緒に行動していた。司法長官は、「イスラエル軍はすぐ近くにジャーナリストがいることを認識していた」と説明した。

また司法長官は弾丸と証拠をイスラエルに提供するつもりはないとした。「占領軍は証拠を隠滅したり新しい嘘をつくつもりです。弾丸の写真すら見せるつもりはありません」

司法長官は目撃者の証言、現場検証、法医学的な調査の結果、この結論に至ったと強調した。

イスラエル軍の報道官は26日、証拠が手元にないため事件の全容を解明することは不可能と述べ、パレスチナに協力を呼びかけた。

また報道官は「ひとつだけ確かなことがある。アクレ氏を故意に撃った兵士はいない」と強調した。「それだけは確かです。故意に撃った兵士はいません...」

イスラエル軍はアクレ氏に当たった可能性がある弾丸を発射したライフルを特定したとしているが、結論を出すにはアクレ氏から摘出された弾丸とパレスチナの協力が必要不可欠としている。

パレスチナの目撃者によると、アクレ氏らの近くに武装勢力はいなかったという。アルジャジーラは目撃者と当時の映像を引用し、「イスラエル軍と交戦したと思われる武装勢力はアクレ氏から約300m離れた地点にいた」と報じている。

イスラエルはパレスチナに米国の監視の下での共同調査を要求している。

パレスチナ政府報道官は記者会見の中で、「調査報告書は米政権と共有する」と述べた。また、アクレ氏の家族とアルジャジーラにもコピーを届けるという。

パレスチナは国際刑事裁判所(ICC)を含む国際機関とも報告書を共有するとしている。ICCは昨年5月のガザ紛争におけるイスラエル軍の戦争犯罪の可能性について調査している。

2022年5月19日/ヨルダン川西岸、アルジャジーラの記者アクレ氏の肖像画(Majdi Mohammed/AP通信)
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