◎地元メディアによると、議会は来月中に予算案を審議する予定だという。
2021年10月25日/パレスチナ、ヨルダン川西岸の町ナブルス、イスラエルの住宅開発業者(Ariel Schalit/AP通信)

10月25日、イスラエル政府はヨルダン川西岸地区とガザ地区に追放したパレスチナ人に対する数十億ドル規模の支出計画を承認した。

地元メディアによると、議会は来月、予算案を審議する予定だという。

予算案が可決されれば、イスラエルは今後5年間でパレスチナの住宅、教育、雇用部門などに支援を提供する。また、地域の犯罪抑制に向けた取り組みには10億ドル(約1,100億円)規模の予算が投入される予定。

イェシュ・アティッド党らと連立を組むアラブ系政党「ラーム党」はこの決定を歓迎したが、「パレスチナに対する支援と占領問題の解決に向けた和平交渉は別物」とくぎを刺した。

マンスール・アッバス議員は25日の声明で、「支出計画で過去の問題を水に流すことはできないが、ヨルダン川西岸地区の開発はユダヤ人とアラブ人の格差を埋めるために役立つだろう」と述べた。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領したが、国際社会はこれを認めていない。

聖地エルサレムを奪われた数百万人のパレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸地区に押し込められ、みじめな生活を送っている。

イスラエル政府は先週、西岸地区に住宅1,355戸を建てる工事入札を行うと発表した。また地元メディアによると、政府は今週後半、西岸地区に約3,000戸の住宅を建設する別の工事計画を発表する予定だという。

右翼「新しい希望」のゼエヴ・エルキン住宅建設大臣は入札開始を歓迎した。

しかし、ハト派のニツァン・ホロウィッツ保健相は25日に放送されたラジオインタビューの中で、「この決定はパレスチナとの和平に向けた取り組みを損なう可能性があり、同意できない」と述べた。

一部の専門家は、「イスラエルはパレスチナに対する支援を強化する見返りとして、国際法違反である1967年の占領を認めさせようとしている」と指摘した。

今回政府が承認した支出計画は「イスラエルのアラブ人」の雇用創出、医療サービスの改善、情報通信インフラのハイテク化、住宅への投資、そして西岸地区で生活するパレスチナ人の老朽化した住宅やインフラへの投資などで構成され、予算額は90億ドル(約1兆円)規模になると見込まれている。

政府の和解プロジェクトは西岸地区に数千から数万戸の住宅をもたらす可能性がある。しかし、主要な人権団体とパレスチナ人活動家は「住宅開発で問題は解決しない」と警告した。西岸地区に追いやられたパレスチナ人は約270万人と推定されている。

EUは25日、イスラエル政府に和解プロジェクトを中止し、工事入札を取りやめるよう求めた。「和解は国際法違反である入植(占領)の公正かつ包括的な解決と、両国の平和への取り組みに深刻な影響を与えるでしょう...」

敬虔なユダヤ教徒であるナフタリ・ベネット首相は入植を強く支持し、パレスチナ国家の創設に強く強く反対している。イスラエルとパレスチナは10年以上和平交渉を行っていない。

イスラム過激派組織ハマスから西岸地区の一部を守っているモハマド・シュタイエ首相は24日の声明でイスラエルの和解プロジェクトを非難し、米国と国際社会に住宅開発を阻止するよう求めた。

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