◎国際原子力機関(IAEA)はイランの未申告核施設でウラン濃縮が行われていることをイラン政府に認めさせ、必要な査察と監視を許可するよう求めている。
2022年3月5日/イラン、首都テヘランの政府庁舎、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(Vahid Salemi/AP通信)

国際原子力機関(IAEA)は5日、イランが長年求めていた回答を提出することに合意したと発表した。

IAEAはイランの未申告核施設でウラン濃縮が行われていることをイラン政府に認めさせ、必要な査察と監視を許可するよう求めている。この合意はイラン核合意の再開に向けた交渉とは別のものだが、核合意を再開させる助けになると期待されている。

IAEAのグロッシ事務局長とイラン原子力庁のエスラミ長官は首都テヘランで数時間会談し、記者会見で合意に達したと明らかにした。

2018年に崩壊したイラン核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止しているが、イランは60%の高濃縮ウランを30kg以上の保有し、その量を増やし続けている。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用

グロッシ事務局長は記者団に対し、「もしイランが問題の解決を望まないのであれば、このような重要な決定に合意するとは思えないし、想像もできない」と述べ、イラン政府の決定を歓迎した。

グロッシ事務局長は長年にわたり、未申告の核施設跡で見つかった人工ウラン粒子に関する質問に答えるようイランに求めてきた。西側諸国、米国の情報機関、IAEAはイランが2003年まで組織的に核兵器開発を進めていたと発表したが、イランはこの主張を否定している。

イラン原子力庁のエスラミ長官は、「イランのウラン濃縮に関する疑惑を取り除く文書を提出する」と述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。

イラン原子力庁は記者会見後に出した共同声明の中で、「イランは3月20日までにIAEAの質問に書面で回答する」と述べた。

AP通信によると、IAEAは書面を精査したうえで疑問点があれば質問状を提出し、1週間以内にテヘランで再び会合を開き、疑問を解消する予定だという。

IAEAは今年6月の理事会までに何かしらの結論を出す予定。

イランは厳しい経済制裁を解除することと引き換えに、ウラン濃縮を制限することに合意した。

しかし、ドナルド・トランプ前大統領は2018年に合意から撤退し、イランの外国資産を凍結したうえで、イランの原油、天然ガス、石油化学製品に対する投資を禁止した。

イランの未申告施設の問題は2015年以前の交渉にも影響を与えていた。2015年にイランを訪問した当時のIAEA事務局長はパルチン軍事施設を視察し、査察官はそこで分析用のサンプルを採取している。

イランは2021年2月以来、IAEAが施設内に取り付けた監視カメラを非公開にしており、西側諸国との交渉が終わるまで保持すると誓っている。

しかし、各国の交渉担当はイラン核合意の再開が近づいていると示唆した。ロシアの交渉担当官であるウリヤノフ大使は4日、「交渉はほぼ終了した」とツイートした。

フランスの交渉担当官フィリップ・エレラ氏は、「我々は非常に非常に合意に近づいており、迅速に結論を出す必要がある」とツイートする一方、「関係国があらゆることに合意しない限り、問題は解決しない」とくぎを刺した。

米国はイランが核開発を放棄すると約束すれば制裁解除に向けた協議に応じると述べている。

一方、ロシアのラブロフ外相は5日、米国とロシアの関係がイラン核合意の再開に影響を与える可能性があると示唆した。

国営のイタルタス通信によると、ラブロフ外相は、「米国政府は、米国の制裁がロシアとイランの関係に影響を与えないことを最低でも国務長官レベルで保証しなければならない」と述べたという。

ロシアとイランは1979年のイラン革命以来、良好な関係を維持している。

ロシアはイランの核開発計画を認め、数多くの兵器を提供している。イランはその見返りにチェチェン紛争を非難せず、進行中のウクライナ危機でも沈黙を守り、ロシアとの貿易を維持すると示唆している。

2021年4月11日/イラン、ナタンツ核施設の遠心分離機(イラン国営テレビ/AP通信)
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