◎多くの市民が反対意見を厳しく取り締まる指導部の弾圧にウンザリし、リスクの高い政治活動より食卓に食べ物を並べることに集中してほしいと思っている。
イラン、首都テヘラン、警察の暴力に抗議する女性(Getty Images)

イランの通貨イラン・リヤドは26日、全国的な反政府デモとイラン核合意再開に向けた交渉が遅々として進むないことなどを受け、初めて1ドル=60万リヤドまで急落し、過去最安値を更新した。

イラン人はこの数日、両替所の前に長い列を作っている。

通貨暴落で多くの市民が生活資金を失った。政府の統計によると、先月の消費者物価指数(CPI)は前年同月から53.4%上昇した。

悲惨な経済状況は指導部への怒りを広める一因となった。

多くの市民が反対意見を厳しく取り締まる指導部の弾圧にウンザリし、リスクの高い政治活動より食卓に食べ物を並べることに集中してほしいと思っている。

イランが2015年に核合意に署名したとき、リヤドは1ドル=3万2000前後で取引されていた。この合意は核開発の厳格な制限・監視と見返りに経済制裁を解除するものだった。

トランプ(Donald Trump)前米大統領は2018年に核合意から離脱し、イランの外国資産を凍結したうえで、イランの原油、天然ガス、石油化学製品などに対する投資を禁止した。

核合意は3.67%以上のウラン濃縮を禁止しているが、イランは60%の高濃縮ウランを生産し続けている。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
▽0.7%:標準
▽2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
▽3.67%以下:イラン核合意の規定値
▽20%以上:高濃縮ウラン
▽90%以上:核兵器用

イランは進行中の核開発について、兵器ではなく平和利用すると主張している。

バイデン政権は合意再開を目指しているが、交渉は昨年暗礁に乗り上げた。イランはロシアに自爆ドローンを供与し、ウクライナ侵攻を支援。欧米諸国を怒らせた。

一方、昨年9月に発生したクルド人女性のアミニ(Mahsa Amini)がヒジャブ(スカーフ)を適切に着用していないという理由でテヘランの警察当局に暴行を受け、その後死亡した事件でも混乱が続いている。

指導部の弾圧に抗議するデモはテヘランから世界に拡大した。

抗議は急速にエスカレートし、デモ隊はイランを支配するシーア派聖職者の追放を求めるようになった。指導部は欧米諸国が騒動を煽っていると非難し、中露寄りの政策を推進している。

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