◎イラン政府は国際刑事警察機構(ICPO)から国際指名手配されているレザ・カリミ氏の顔写真を公開したうえで、逮捕すると誓約した。
2021年4月17日/イランのナタンツ核施設を攻撃したと伝えられている男性の写真(イラン国営テレビ/ロイター通信)

4月17日、イラン国営テレビはナタンツ核施設の攻撃に関与した男性の顔写真を公開した。

報道によると、レザ・カリミ氏は施設を攻撃する直前にイランから逃亡したという。イラン政府は国際刑事警察機構(ICPO)から国際指名手配されているカリミ氏の顔写真を公開したうえで、逮捕すると誓約した。

しかし、地元メディアによると、ICPOの指名手配リストにレザ・カリミという名の男性は存在しなかったという。一部の専門家は、「イランは核施設で発生したミスをカリミ氏になすりつけるつもりかもしれない」と警告している。

イランはナタンツ核施設で発生した事件の詳細を明らかにしていないが、地元メディアは「停電」の影響で施設内の多くの機器が損傷し、ウランの濃縮に使用する遠心分離機も破壊されたと報じた。

イランは攻撃をイスラエルの「核テロ」と断言し、ウランの濃縮度を20%から60%に引き上げた。イラン核合意(包括的共同行動計画:JCPOA)は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用

一方、イスラエル政府は事故について一切コメントを発表していないが、イスラエルの一部のメディアは、「ナタンツ核施設は諜報機関モサドのサイバー攻撃で破壊された」と報じている。

2021年4月11日/イラン、ナタンツ核施設の遠心分離機(イラン国営テレビ/AP通信)

イランはナタンツ核施設で発生した「核テロ」と信じられている攻撃がどのように発生したかを明らかにしておらず、容疑者と伝えられているカリミ氏は攻撃が発生する直前にイランから逃亡したと主張している。

専門家はAP通信の取材に対し、「容疑者と思われる男性は施設内に時限爆弾を設置したのかもしれません」と述べた。「ただし、イランは事件の情報をほとんど公表していません。犯人はひとりで行動していたのか、それとも複数なのか...」

イラン議会の核研究センター責任者を務めるアリレザ・ザカニ氏は声明で、「核物質の製造に使用していた何千もの機器が攻撃で破壊され、イランの核計画に大きな影響を与えた」と述べた。

当局者によると、攻撃は地上から地下50mの間に設置された施設を狙っていたという。

イラン国営テレビは17日の放送の中で、「情報省は一連の核テロの容疑者を特定した」と述べた。「ナタンツ核施設を攻撃したレザ・カリミ容疑者はイラン国外に逃亡しました。当局はレッドノーティスで国際指名手配されている容疑者を逮捕し、合法的な方法でイランに移送したのち、必要な措置を講じます」

国営テレビは損傷したと伝えられている遠心分離機の写真を公開したが、攻撃の詳細については明らかにしなかった。

地元メディアによると、ICPOは取材に対し、「特定のケースまたは個人についてコメントすることはできない」と述べたという。しかし、ICPOのウェブサイトの指名手配リストにレザ・カリミという名前は存在しなかった。

オーストリアの首都ウィーンで15日から始まったイラン核合意の再開に向けた交渉は進展したと伝えられている。しかし、イランの首席交渉官、アッバース・アラクチ氏は国営メディアの取材に対し、「深刻な意見の不一致がある」と語った。

ジョー・バイデン大統領はイラン核合意への復帰を昨年の選挙キャンペーン期間中から示唆していたが、復帰の条件は「核開発の放棄」と主張している。

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