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IMF専務理事、米イラン戦争の長期化に言及「世界経済に深刻な打撃」

IMFは今後も情勢の推移を注視するとしており、紛争の長期化が現実となれば、エネルギー、食料、金融市場を通じた複合的なショックが世界経済に広がる可能性が高い。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事(ロイター通信)

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ(Kristalina Georgieva)専務理事は4日、米イスラエルとイランの戦争が長期化した場合、世界経済が深刻な打撃を受けるとの認識を示し、特に紛争が2027年まで続けば「はるかに悪い結果」に直面する可能性があると警告した。

同氏は講演で、原油価格が1バレル=125ドル前後まで上昇するシナリオを想定し、その場合は世界のインフレがさらに加速し、物価上昇圧力が常態化する恐れがあると指摘した。IMFは当初、戦争は短期で収束すると見込み、世界経済は緩やかな減速にとどまるとの「基準シナリオ」を描いていたが、戦闘の長期化によりこの前提は崩れつつあるという。

現在はすでに、世界のGDP成長率が2.5%に鈍化し、インフレ率が5.4%に達する「悪化シナリオ」に近づいているとされる。さらに事態が悪化した場合、成長率は2%程度まで落ち込み、インフレ率は5.8%に上昇する「深刻シナリオ」も現実味を帯びる。

背景にはエネルギー供給の混乱がある。中東の要衝ホルムズ海峡は世界の石油の2割が通過する重要ルートだが、戦闘の影響で輸送が制限され、世界的な供給不足が懸念されている。米石油大手シェブロンのCEOも物理的な供給不足が現実化しつつあると指摘し、特にアジアで経済の縮小圧力が強まる可能性を示した。

また、影響はエネルギーにとどまらない。肥料価格はすでに30〜40%上昇し、食料価格も3〜6%押し上げられる見通しで、サプライチェーン全体への波及が懸念されている。

ゲオルギエワ氏は各国政策当局に対し、危機が短期で終息するとの前提で対応するべきではないと強調した。またエネルギー供給が縮小する中で需要を維持しようとする政策は、結果的にインフレ圧力を強める恐れがあるとし、「火に油を注ぐな」と警鐘を鳴らした。

中東情勢の緊張は軍事面でも拡大し、主要国による軍事行動や海上輸送の安全確保を巡る動きが続いている。こうした地政学的リスクの高まりが、世界経済の不確実性を一段と強めている。

IMFは今後も情勢の推移を注視するとしており、紛争の長期化が現実となれば、エネルギー、食料、金融市場を通じた複合的なショックが世界経済に広がる可能性が高い。各国にとっては、インフレ抑制と景気下支えの両立という難しい政策運営が迫られる局面となっている。

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