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ブラジルのアマゾン地域で「違法金採掘」急拡大、取り締まり強化も”いたちごっこ”続く

問題の背景には、近年の国際的な金価格の上昇がある。
ブラジル、アマゾンの違法採掘現場(AP通信)

南米ブラジルのアマゾン熱帯雨林で金価格の高騰を背景に違法な金採掘が急増し、森林破壊と水銀汚染が深刻化している。現地の研究者や当局は、この動きが保護区や先住民の土地にまで及び、環境と人間の健康の双方に重大な影響を及ぼしていると警鐘を鳴らしている。

問題の背景には、近年の国際的な金価格の上昇がある。安全資産としての需要が高まったことで採掘の利益が拡大し、アマゾン各地で「ゴールドラッシュ」が再燃した。この結果、違法採掘業者がアマゾン内部へと流入し、伐採や掘削による環境破壊が急速に進んでいる。

非政府組織アマゾン・コンサベーション(Amazon Conservation)の調査によると、2018年以降、アマゾン全域で約49万6000ヘクタール(福岡県の面積とほぼ同じ)の森林が採掘によって失われ、そのうちブラジルだけで約22万3000ヘクタールに達した。さらに、採掘に伴う森林破壊の約8割が違法である可能性が高いという。

特に被害が顕著なのはシングー川流域の保護区である。テラ・ド・メイオ(Terra do Meio)生態保護区では2024年に初めて違法採掘が確認され、その後わずか1年余りで数十ヘクタール規模に拡大した。国有林や源流生物保護区でも同様に採掘跡地が広がり、衛星監視では違法業者が使用する秘密滑走路の存在まで確認されている。

採掘の影響は森林破壊にとどまらない。金を分離する過程で使用される水銀が河川に流出し、生態系と住民の健康を脅かしている。調査では、アマゾン地域の市場で販売される魚の約2割が世界保健機関(WHO)の基準を超える水銀濃度を示し、幼児が推奨値の数十倍の水銀を摂取しているケースも確認された。

こうした汚染は、川沿いで生活する先住民や地域住民に直接的な影響を及ぼす。水銀は神経毒性を持ち、特に子どもの発達に深刻な障害を引き起こす可能性があるため、医療・人権の問題としても国際的な関心が高まっている。

一方で、取り締まりは十分な効果を上げていない。ブラジル当局は違法採掘機材の押収や摘発を進めているが、現場では「いたちごっこ」の状態が続く。摘発後も業者がすぐに戻るケースが多く、監視の空白を突いて活動が再開される。

さらに深刻なのは、これらの違法採掘が犯罪組織と結びついている点である。資金力のある組織が採掘事業を支え、高価な機材や物流網を提供しているとされる。こうしたネットワークは広範囲に及び、単なる環境問題を超えて治安や統治の課題ともなっている。

中央政府は対策として、先住民保護区での取り締まり強化や科学的監視の拡充、違法金の流通経路の遮断に取り組む方針を示している。しかし、金需要そのものが続く限り、違法採掘の誘因を完全に断つことは難しいと指摘される。

アマゾンは地球規模の気候調整機能を担う重要な生態系であり、その破壊は気候変動の加速にも直結する。違法金採掘の拡大は、森林減少と汚染を同時に進行させる複合的な危機であり、国内外の協調的な対応が求められている。

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