”元”生物医学先端研究開発局(BARDA)局長は、アメリカに暗い冬が訪れると警告した

冬来たる」が現実になるか否かは誰にも分からない。しかし、来るべき時に備え、準備を進めねばならないことは確かである。

リック・ブライト氏はアメリカのワクチン開発の最前線「生物医学先端研究開発局(BARDA)」の局長を務めていたが、先月解任された。

同氏は、「トランプ大統領によって”売り込まれた”治療法に対する懸念を表明したことで反感を買った。過ちは正すべきと思ったが、発言に不満を抱かれた結果、ポストを解任された」と述べた。

ブライト氏とトランプ大統領の不仲については、以前から度々話題になっていた。同氏は、パンデミックの発生前(ワシントンD.C.で感染が確認された時点)に政府が正しい処置を行っていれば、数万人もの命が失われることはなかった、と上院小委員会の場で述べた。

また、「1月時点で医療機器(マスク、防護部など)の不足と問題点を保健福祉省(HHS)の最高責任者に報告したが、回答は得られなかった。対象者とのやりとりは、全てメールに保存している」と付け加えた。

不都合な真実

ブライト氏はBBCの取材に対し、「コロナウイルスに対処するチャンスを逸しつつある。科学に基づき、今の対応を改善しなければ、パンデミックはさらに悪化し、長期化するも懸念される。より良い計画を立て実行せねば、アメリカ史上最悪の暗い冬を迎える可能性もあり得る」と警告した。

同氏は、連邦政府から割り当てられた予算は、安全で科学的に吟味された次代の解決方法に投入すべきであり、科学的根拠に乏しい既存のワクチン(レムデジビル)や、その他の技術に使うべきではないと言う。

パンデミックの早期終息を目指すトランプ大統領は、今すぐ手に入るワクチン、効果を”期待できる”既存の薬品や技術に頼っている。そして、”結果が出る前”にロックダウンの解除を推進し、今すぐ経済活動を再開しろ、と指示を出しているのだ。

このギャンブルが成功すれば、多くの命が救われると同時に、アメリカ経済の復活も多少早まるかもしれない。しかし、世界中の優秀な科学者、医師、医療関係者は、トランプ大統領の行動に恐怖し、過ちを正すべく異議を唱えている

ブライト氏は、今月初めに発信した記事と”政治的理由”によりBARDA局長を解任されたと述べた。発信した記事とは、クロロキンに関する意見を述べたものであった。しかし、それは発信直後に削除された。

トランプ大統領は、坑マラリア薬として同国が開発したクロロキンを、コロナウイルスの治療に効果がある、流れを変える「変革者」と表現した。しかし、多くの専門家は、科学的根拠に乏しく、また、それを投与することは危険であると警告した。

同氏の”申し出(クロロキンの記事)”は連邦政府によって抹消された。この行為は、「科学者の言うことは信用しない」と言ったに等しい愚行である。

クロロキンを巡る一見は騒ぎを呼び、結果、それが医療を必要とする国民に届けられることはなかった。同氏は「私にはトランプ大統領の推奨する”健康と安全を脅かす薬物”から公衆を守る義務があった」と述べた。

上院小委員会の後、トランプ大統領は、「彼のことは知らないし会ったこともない。もちろん、私は彼に会いたくない。ブライト氏は突然怒り出したパート社員のように見える。彼は”良い仕事をしなかった”と報告を受けている」と述べた。

保健福祉省のアレックス・アザール長官は、「当局はブライト氏の勧告に従い行動している。彼の”申し出”は我々に届いている。今、連邦政府がクロロキンの話をしないことがその証拠だ」と遠回しに述べた。

15日、アメリカの感染者数は145万人を突破、86,000人以上が死亡した。

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