◎港湾都市デルナでは上流のダム2つが決壊。町の4分の1が壊滅状態となり、水道・電気・インターネットも遮断された。
2023年9月12日/リビア東部、洪水に見舞われた通り(Getty Images/AFP通信)

北アフリカ・リビア東部で発生した洪水による死者が5300人に達した。地元当局が13日、明らかにした。

首都トリポリに拠点を置く西部政府は声明で、「少なくとも7000人以上が負傷し、9000人以上が行方不明になっている」と報告。死者数はさらに増加する可能性があると警告した。

この大雨は地中海周辺に大きな被害をもたらした低気圧「ダニエル」がもたらしたものであり、ギリシャ、トルコ、ブルガリアでも甚大な被害が報告されている。

国連の国際移住機関(IOM)は13日、壊滅的な被害を受けたデルナを中心に市民約3万人が住まいを失い、路頭に迷っていると報告した。

トリポリの国立気象センターによると、東部地方では10日までの24時間雨量が多いところで400ミリに達したという。

港湾都市デルナでは上流のダム2つが決壊。町の4分の1が壊滅状態となり、水道・電気・インターネットも遮断された。

東部の港町シルトに拠点を置く援助団体や保健当局は少なくとも5300人が死亡したと報告。国際的な人道支援組織・国際救済委員会(IRC)はデルナだけで6000人が行方不明になり、2万人以上が避難を余儀なくされたと報告している。

米国、ドイツ、イタリア、イラン、カタール、トルコなどが東部に援助を送った、あるいは送る用意があると表明している。

しかし、東部に続く多くの道路が洪水の影響で使用不能となり、物資を届けることが困難になっているようだ。

エジプト大統領府は13日、ヘリコプター空母をリビアに派遣し、野戦病院として使用すると発表した。

エジプト政府は医薬品、食料、救助隊を積んだ軍用機3機を現地に送っている。また、生存者の避難を支援するため、医療スタッフを乗せた航空機10機を追加派遣する予定だ。

エジプト政府は声明の中で、この洪水に巻き込まれたエジプト人87人の死亡を確認したと明らかにした。

エジプトの国営テレビはベンガジとみられる場所で家族の死を悼む人々の姿を報じている。

東部政府を支援する軍派閥トップの元国軍将校ハフタル(Khalifa Haftar)司令官は12日、テレビ演説の中で、「被災地で救援・救助活動が行われている」と説明した。

またハフタル氏は「我々は東部政府に対し、あらゆる能力を駆使して被災地に必要な医療を提供し、現場に医療輸送隊を派遣し、家を失った人々に避難所を提供するよう命じた」と述べていた。

2011年のカダフィ(Muammar Gaddafi)大佐討伐後、国連の支援を受けることとなった西部政府のドベイバ(Abdul Hamid Dbeibah)首相は多くの問題に直面し、難しい対応を迫られている。

政治的な行き詰まりと争いは東部と西部の分断を招き、2つの政府が発足。混乱が収束する見通しは全く立っていない。

ドベイバ政権と対立する東部政府を率いるバシャガ(Fathy Bashagha)首相はシルトに拠点を置き、2021年3月頃から権力闘争を続けている。

東部のインフラはほとんど整備されておらず、今回の大雨に全く対応できなかったとみられる。

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