◎最も大きな被害を受けたデルナを含む東部政府が支配する地域で約1万1300人の死亡が確認され、少なくとも1万100人と連絡が取れない状態。
2023年9月14日/リビア、東部デルナの洪水被災地(Abdullah Doma/AFP通信/Getty Images)

北アフリカ・リビア東部で発生した洪水の死者が1万1000人を超えた。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)が15日、明らかにした。

それによると、最も大きな被害を受けたデルナを含む東部政府が支配する地域で約1万1300人の死亡が確認され、少なくとも1万100人と連絡が取れない状態だという。

この大雨は地中海周辺に大きな被害をもたらした低気圧「ダニエル」がもたらしたものであり、ギリシャ、トルコ、ブルガリアでも甚大な被害が報告されている。

港湾都市デルナでは上流のダム2つが決壊。町の25%が壊滅状態となり、水道・電気・インターネットも遮断された。東部政府はデルナを災害地域に指定し、救助隊を総動員している。

リビア赤新月社によると、デルナの被災地には難を逃れた多くの市民が戻ってきているという。国連の国際移住機関(IOM)は今週、デルナを中心に市民約3万人が住まいを失い、路頭に迷っていると報告していた。

多くの国がリビアに援助を送ると表明しているが、被災地に続く多くの道路が通行不能となり、物資を届けることが困難になっている。

また同国の複雑な政治状況も救援活動の妨げになっている。国連の支援を受ける西部政府は東部政府を非難し、責任を持って対応に当たるよう要請している。

国連世界気象機関(WMO)は14日、「気象予報が機能していれば、ここまでひどいことにはならなかったはずだ」と指摘した。

またWMOは東部・西部政府に対し、連携して救援・救助活動に当たってほしいと呼びかけた。

現地メディアによると、仏パリに拠点を置く国際医療支援団体「国境なき医師団」の職員が14日にデルナに到着し、ニーズ調査を開始したという。

東部政府を支援する軍派閥トップの実力者で、元国軍将校のハフタル(Khalifa Haftar)司令官は12日、「被災地で救援・救助活動が進められている」と説明した。

またハフタル氏は東部政府に対し、あらゆる能力を駆使して被災地に必要な医療を提供し、現場に医療輸送隊を派遣し、家を失った人々に避難所を提供するよう命じた。

2011年のカダフィ(Muammar Gaddafi)大佐討伐後、国連の支援を受けることになった西部政府のドベイバ(Abdul Hamid Dbeibah)首相は多くの課題に直面し、難しい対応を迫られている。

政治的な行き詰まりと争いは東部と西部の分断を招き、2つの政府が発足。混乱が収束する見通しは全く立っていない。

ドベイバ政権と対立する東部政府のバシャガ(Fathy Bashagha)首相はシルトに拠点を置き、2021年3月頃から権力闘争を続けている。

東部のインフラはほとんど整備されておらず、今回の大雨に全く対応できなかったとみられる。

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