カーボンクレジット投資で農地が森林化、ニュージーランド農村に広がる変化
森林転換のための農地購入は足元で減少しているものの、カーボンクレジットを軸とした土地利用の変化は、ニュージーランドの農業と農村社会に長期的な影響を及ぼしている。
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ニュージーランドで温室効果ガスの排出削減を目的とした「カーボンクレジット」をめぐる投資が農地の利用を変えている。排出量取引制度(ETS)を通じて、成長する森林が生み出すカーボンクレジットを企業などに販売できるため、羊や牛の放牧地を森林に転換する動きが拡大している。ロイター通信によると、同国では約20年間でカーボンクレジットの対象となった森林が約9000平方キロメートルに達した。
特に影響を受けているのが、羊や牛の飼育が盛んな地域だ。業界団体ビーフ・アンド・ラム・ニュージーランドによると、2017年以降、約3300平方キロメートルの羊・牛牧場が森林転換を目的に売却された。これは200万頭以上の羊を養える規模で、国内の羊の飼育頭数の約9%に相当する。投資家との競争によって放牧地の価格も上昇し、同期間の価格上昇率は9.7%となった。
農村では土地利用の変化が地域社会にも波及している。北島のポンガロア周辺では、過去10年間に近隣の5農場が森林へ転換されたという。農場で働く人や関連事業者が減少する中、地元のラグビークラブは2022年に十分な選手を確保できず活動を終了し、地域運営の保育施設も2023年に閉鎖された。統計局によると、この地域の人口は過去10年間で2.6%減少した。
森林化によって、放牧地周辺の野生動物や害獣の問題が深刻になったとの農家の指摘もある。山羊やイノシシなどが森林から牧草地へ入り込むほか、2023年のサイクロン・ガブリエルでは森林から流出した樹木などが河川を下り、インフラや住宅に被害を与えた。乾燥する夏には森林火災のリスクを懸念する声も出ている。
一方、森林投資を支持する側は、ETSによる森林造成が気候変動対策に必要だと説明する。NZ気候変動委員会は、ETS対象森林が2026~30年の排出削減目標に必要な削減量の約4分の1、2031~35年には約半分を担うと見込んでいる。中央政府も森林だけに依存する政策ではないとしながら、森林による排出削減を重要な手段と位置付けている。
ただ、反対派はカーボンクレジットへの依存が、企業による直接的な排出削減を遅らせる可能性を指摘している。政府は昨年末、外来種である松などを生産性の高い農地に植える場合のETS規則を厳格化した。
森林転換のための農地購入は足元で減少しているものの、カーボンクレジットを軸とした土地利用の変化は、ニュージーランドの農業と農村社会に長期的な影響を及ぼしている。
