ムーランリリース

ディズニーの大作映画、「ムーラン」のリリースは、映画館および映画業界復活を祈念する最初の大型リリースイベントになる予定だった。

しかし、同作は一部のアジア諸国でボイコットを求める声に直面している。

昨年、中国映画のスター、リウ・イーフェイ(劉 亦菲)氏は、民主主義抗議者に対する香港警察の破壊と暴力を支持し、ファンの怒りを買った。

現在、タイと台湾の活動家たちはムーランを見ないようSNS等で呼びかけている。

Disney's Mulan | Final Trailer

香港

昨年、香港では中国共産党に対する大規模な抗議活動が発生した。

若者たちは、香港から中国本土への容疑者引き渡しを許可する法律(逃亡犯条例)に反対し、数カ月に及ぶ抗議活動を主導した。

その後、抗議者たちの要求は香港の民主化と、警察が行ってきた残虐行為の調査に発展、急速に拡大した。

香港のうねりが世界に広がった時、中国生まれのアメリカ人、リウ・イーフェイ氏は、共産党が運営する機関紙、人民日報からWeiboにメッセージを投稿した。

リウ・イーフェイ氏:
「私は香港警察をサポートする。香港の民主主義抗議者たちは私に攻撃を加えるだろう。しかし、それはとても残念なことだ。そして、現在行っている抗議活動は、香港にとって不必要なものである

#BoycottMulan(ボイコットムーラン)は猛烈な勢いでSNS上に拡散され、ツイッターのトップトレンドに躍り出た。なお、中国国民は、イーフェイ氏の発言を支持する者が圧倒的に多い。

現在、香港の緊張状態は世界を巻き込み、継続中である。

抗議の引き金となった逃亡犯条例は取り下げられた。しかし今年の4月、抗議活動を主導する民主主義活動家が香港警察に逮捕された。

1か月後、警察および共産党に忠誠を誓う犬(司法)は、2019年の抗議行動の中で香港警察により重大な不正行為は一切なかったと判断した。

そして6月、民主主義活動家たちの抗議および民主化への願いは、「国家安全法」成立によって叩き伏せられた。なお、その詳細は、共産党の独裁者「習近平」がOKサインを出すまで最高機密として扱われた。

国家安全法施行後、香港国内における中国当局の力は香港警察を軽々と上回り、国民は抗議の声を少し上げただけで粛正されるようになった。

おぞましい歴史が始まり、今も続いている中、著名な活動家として知られるジョシュア・ウォン(黄之鋒)氏は「#BoycottMulanを信じる全ての人々」に呼びかけた。

ディズニーと中国

ウォン氏は、ディズニーと中国の密接過ぎる仲良し関係を指摘。先月、アメリカのウィリアム・バー司法長官が述べたコメントを引用した。

ディズニーおよび他のハリウッドスタジオは、中国で発生する巨大な収益に期待している

同国の映画市場はアメリカに次ぐ世界第2位。超大作であれば5億ドル近い興行収入を稼ぎ出すことも珍しくなし。

昨年公開されたディズニー(マーベル)の大作「アベンジャーズ エンドゲーム」は、中国国内だけで約6.3億ドル(670億円)を売り上げた。

一方、中国国内で作品を公開するためには、共産党の検閲を通過しなければならない。そして、これはかなり厳しく、少しでも人民に悪い影響を与えると判断されれば、同国内での興行収入はゼロになる。

ディズニーは世界2位の映画市場でのムーランリリースを確実にすべく、内容を共産党好みに調整し、検疫をクリアした。

ムーランのオリジナル映画(1998年:ディズニー)は中国の伝説に基づいており、1998年にリリースされた。しかし、アメリカや世界各国で大ヒットを記録したものの、ストーリー発祥の地では不評だった。

カルチャーアナリストのクリスティーン・ニー氏はBBCの取材に対し、「中国の検疫は映画を破壊する。しかし、稼ぎたければそれを通過するしかない。ディズニーは成功を望んでいる」と述べた。

ムーランクリップ集

#MilkTeaAlliance

香港の著名な活動家のひとり、アグネス・チョウ(周 庭)氏が先月逮捕された時、抗議者たちは「本物のムーラン」と呼んだ。

抗議者たちは巨大な障害をものともせず、最前線で戦うチョウ氏に感銘を覚え、そう呼んだのである。

ムーランおよびイーフェイ氏に嫌悪感を示したタイでも軍事政権への抗議活動が激しさを増しており、この過去1カ月の間に何千何万もの人々が街頭に集まった。

タイ国内における学生主導の抗議活動は、憲法と君主制の修正、選挙、首相の解任、そして民主主義活動家への陰湿な嫌がらせの停止を望んでいる。

抗議者たちは、中国共産党の影響力に危機感を抱いており、それが「#MilkTeaAlliance」につながった。

これは中国共産党に反対する香港、台湾、そしてタイで愛されている「チャーイェン(ミルクティー)」と、抗議者たちの団結を結び付けたものである。

タイの学生活動家であるネティウィット・チョティファトファイサル氏は、ツイッターでムーランについてのメッセージを共有。人々にそれを見ないよう求め、「ディズニーと中国共産党は、タイ国民に対する国家の暴力を容認している」と主張した。

逮捕された件について語るアグネス・チョウ氏

ムーランの行方

ムーランはコロナウイルスの影響をモロに受け、映画館で公開されることなく、ディズニープラスでリリースされることになった。なお、視聴するためにはディズニープラスに加入しなければならない

2015年からリメイクされたディズニー映画、「シンデレラ」「ジャングルブック」「美女と野獣」「ライオンキング」「アラジン」は、世界で約58億ドル(6,162億円)を荒稼ぎした。つまり、ディズニーはムーランにも頑張ってほしいと思っている。

イギリスのディズニーファン、エミリー・タルブット氏はBBCの取材に対し、「あまり知られていない俳優をサポートする中国共産党寄りの映画製作は、ディズニーの看板に傷をつける。ファンは世界中から愛されるディズニー映画を望んでいる」と述べた。

中国の視聴者は、ムーランの予告編の中で歴史的な誤りを発見した。

しかし、最初の予告編が公開された時点のWeiboによる好感度調査では、約115,000人がムーランに「満足している」ことが分かった。

あるユーザーはWeiboに以下のコメントを投稿した。

あるWeiboユーザー:
我々は、中国独自のディズニープリンセスに恋をした

Christina Aguilera - Reflection (2020) (From "Mulan")

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