崖っぷちの格安航空会社

アイルランドの格安航空会社、ライアンエアーの客室乗務員は、コロナショック以降の世界でも仕事を続けていくために、4年間の給与カットを受け入れた。なお、同社のパイロット数百名の給与も合わせてカットされることが決まっている。

コロナウイルスが世界中に拡散したことで、世界中の航空会社がフライトを制限せざるを得なくなり、存続の危機に立たされている。

7月8日、世界の航空業界を代表する老舗、ユナイテッド航空は、搭乗率やフライト本数が元の水準まで回復しなければ、雇用を大きく削減することになるだろうと述べた。

ライアンエアーも世界の航空各社と全く同じ資金繰り状況にあり、5月には欧州全体で約3,000人、全従業員の約15%を削減すると発表した。しかし、ユナイト労働組合は客室乗務員の仕事を是が非でも保護したいと考え、4年間の給与カットと引き換えに、雇用の維持を図った。なお、同社は客室乗務員の削減予定人数を発表していなかった。

ユナイト労働組合との交渉を終えたエディ・ウィルソンCEOは記者団に対し、「数百名の客室乗務員がこれまで通り仕事を続けることになった。今回の同意は、コロナショックを乗り切るべく同社と従業員が一丸となって戦うことを意味する」と語った。

ユナイト労働組合のダイアナ・ホランド氏はBBCの取材に対し、「今回の協定により、客室乗務員の雇用が維持された。しかし、航空業界を取り巻く環境が改善されない限り、危機は続くだろう。ユナイトに所属する航空会社の労働組合員たちは、かつてない困難な状況に直面している」と述べた。

またホランド氏はライアンエアーの提案した”給与カットによる雇用維持”を評価したうえで、「多くの競合他社がキャッシュ確保のために人件費をカットしている。ライアンエアーのとった手法は、建設的かつ業界が復活した際のことを考えている。大切なことは、雇用を維持しながらコロナショックに立ち向かうことだ」と付け加えた。

ユナイト労働組合は、客室乗務員の最低賃金の5%、その他関係スタッフの賃金7.5%~10%をカットすることに同意した。ただし、ライアンエアーの業績が現在の計画より早く回復した場合は、賃金カット期間(4年)を見直すことが可能だという。

客室乗務員より高給なパイロットの賃金は、既に20%カットされている。なお、雇用は原則維持を予定しているものの、万一、搭乗率やフライト本数などの影響で経営環境がさらに悪化すれば、カット率の見直しもあり得るという。

ライアンエアーを含む英国の航空各社は資金繰りに奔走している。6月中旬からEU加盟国間の国境開放が進み、アイルランドから各国を結ぶ定期便も運行を再開し始めた。しかし、主力となる国際線の大多数(アメリカ大陸方面行き、アジア方面行きなど)の運航再開時期は見通せない状況だ。

さらに、大多数の人々がコロナウイルスへの感染を恐れ、旅行や観光を控えている。運行再開にこぎつけた国内線および欧州線の搭乗率は”低空飛行”を続けており、「飛ばせば飛ばすほど赤字が膨らむ」と関係者は頭を抱えている。

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ユナイテッド航空

世界中の航空会社は、限られたフライトで収益を上げることができずにいる。

飛べない飛行機はただの”穀潰し”、駐機場に駐機するだけでキャッシュを湯水のように消費し続ける。さらに、数万人規模の人件費も航空会社に重くのしかかる。

7月8日、アメリカの航空会社大手、ユナイテッド航空が人員削減の危機にあるとコメントした。同社は、「全従業員の30%に当たる36,000人がリストラの対象になる。航空業界を取り巻く環境が劇的に改善されない限り、人員削減は避けられないだろう」と述べた。

トランプ政権は米航空各社に数十億ドル規模の資金を投入した。しかし、コロナショックの影響が長期化し、さらに、パンデミックの再来を受け、国内線の運航すらままならない状況に陥ったことで、資金繰りはショートしかけている。

アメリカの旅行・観光需要はロックダウンの段階的な解除により回復の兆しを見せていたが、経済活動再開だけに重点を置いた結果、南部および西部でパンデミックが発生し、国内線の運航再開計画は雲散霧消した。

同社によると、最終的な人員削減数は決まっておらず、運行状況が改善しなければ、36,000人”以上”が対象になる可能性もあると説明した。また、自主退職を希望する人も同時に求めるという。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月8日時点のアメリカの累計感染者数は約311万人、134,000人以上が死亡した。また、同日1日当たりの新規感染者数は60,000人を突破した。

感染状況が悪化しているにも関わらず、ホワイトハウスは学校などの施設を再開したいと考えている。

ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高責任者を務めるマイク・ペンス副大統領は記者団に対し、「ロックダウンの緩和は予定通り進めるべきである。厳しすぎる規制は望ましくない」と主張した。

7月7日、国内の感染者数が激増している件について質問されたトランプ大統領は、「感染状況は改善されている。全て予定通りだ。我々は良い位置にいる」と答えた。大統領の予言は見事に的中し、翌日の新規感染者は世界歴代最高を大幅に更新する62,425件を記録した。

南部および西部の感染状況は刻一刻と悪化しており、カリフォルニア州とテキサス州の1日当たり感染者数は10,000件を超えている。

コロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師はアメリカの現状ついて、「我々は第一波を抑えることすらできず、コロナウイルスに屈しようとしている」と警告した。

ペンス副大統領は、保健当局および教育当局責任者を従え記者団の質問に答えた。その中で、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が学校の再開に関する新しいガイドラインを発効すると説明した。

アメリカの学校は、8月末もしくは9月初め頃に新学期を迎える。CDCのガイドラインには、生徒、教員および関係スタッフ全員がマスクを着用し、オンライン授業導入も奨励している。また、学年やクラス単位による時差登校や時差授業などを活用し、密な状態を可能な限り避ける方法などが明記されている。

AP通信によると、オクラホマ州タルサ市の保健当局は、先月開催されたトランプ選挙キャンペーンおよびそれに関連する反対抗議集会で大規模クラスターが発生した可能性がある、とコメントした。

タルサ市保健局のブルース・ダート博士は、「過去数日間で500件以上の新規ケースが報告されている。追跡調査を行った結果、2週間前の集会が関連していた」と述べた。なお、チームトランプ(選挙キャンペーンチーム)は、まだコメントを発表していない。

7月8日、アイビー・リーグ(大学アメフト)は、2021年1月まで全ての活動を一時停止し、本来であれば秋に開幕するシーズンの中止を決定した。

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