COVID-19救済パッケージ

7月19日、巨大なコロナウイルスの嵐を乗り切った後の経済回復計画を打ち出したいEUの指導者たちは、予定外のサミット延長戦に突入した。

一部の加盟国は、提案されているCOVID-19救済パッケージ7,500億ユーロ(約90兆円)の規模が大きすぎると考え、拠出率に伴う一括支払いではなくローンにすべきだと主張している。

オーストリアのセバスティアン・クルツ首相は「進むべき道は決まっている」と語り、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相と激突した。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、サミット延長戦(19日)を強行しても取引は成立しない可能性があると述べた。

EU首脳会談3日目、世界中でコロナウイルスの感染爆発が発生し、首脳陣にも衝撃が走った。世界保健機関(WHO)は、世界の24時間当たりの新規感染者数が26万件を超えたと発表した。

2月末頃からのパンデミック開始以来、24時間当たりの感染者数はジワジワと増え続けてきたが、25万件を超えたのは初めてであり、急激な増加にWHO関係者も困惑していた。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月19日時点の世界の累計感染者数は1,440万件、60万人以上の死亡が確認されている。

EUの指導者たちは7月17日からブリュッセルに集結し、2027年までのEU予算約1兆ユーロ(122兆円)と、コロナウイルスに痛めつけられた各国の経済回復を支援するCOVID-19救済パッケージ計画を話し合った。

EU各国はパンデミックを抑え込むべく3月頃から順次ロックダウンを発出したため、首脳陣がブリュッセルに集結したのは約5か月ぶりだった。会談前、指導者たちはハグではなく、肘をぶつけ合い再開を喜んだ

今回話し合われた2つの予算計画は、コロナウイルスによって経済活動に大打撃を受けた推進派グループと、巨大パッケージの費用拠出を警戒する慎重派グループに分かれている。

オランダやスウェーデンなどの一部の北欧諸国は、ローンでの費用拠出を強く主張。各国の年度予算はコロナ対策や経済対策で逼迫しており、EUへの資金拠出は難しいと考えている。

一方、イタリアやスペインなどは、粉々に吹き飛ばされた経済を復活させることが最優先課題であり、また、EUはパンデミックに見舞われた国々への支援を怠ったと非難した。

イタリアは、北部ロンバルディア地方の巨大パンデミック(3月)で大量の感染者と死者を出し、最初の欧州震源地になった。その際、EUが必要な支援を怠り、結果、感染が欧州全域に広がったと主張している。

イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は、「欧州は予算に脅され、交渉は激化している。必要な措置を適切なタイミングで講じなければならない」と語った。

ハンガリーのヴィクトル首相は、オランダのマルク・ルッテ首相が個人的な怒りをぶつけ、経済回復に欠かせない救済パッケージと2国間の政治問題を結び付けようとしている、と激しく非難した。

ハンガリーとポーランドは、政府の司法介入を推し進め、「司法の独立」が崩壊の危機にある、と各国は懸念を表明している。EUは民主主義の原則を満たさない国に予算は配分しないと主張しており、その場合、両国はCOVID-19救済パッケージを拒否すると述べている。

これらの主張に対しメルケル首相は、「解決策が見つかるかどうかはまだ分からない。誰もが善意を主張している。しかし、誰もが微妙な立場に立たされており、主張を妥協することは容易ではない」と述べた。

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EU回復計画

欧州各国はロックダウンを緩和もしくは解除した。しかし、コロナウイルスは依然として勢力を保ち、いつ第二波が発生してもおかしくない状況である。

現在、局所的なクラスターが各地で発生している。スペインのカタルーニャ北東部では1,000人規模の新規感染を記録し、バルセロナ、ラノゲラ、エルセグリアで暮らす約400万人が再ロックダウン(15日間の外出禁止)された。

EUの予算委員を務めるヨハネス・ハーン氏は、7月18日の世界感染爆発Dayに対し、「パンデミックは欠片ほども終わっておらず、気を緩めてはいけない。私たちは、国民と経済に必要な救済を行える今回のパッケージに同意すべきだ」とツイートした。

WHOの関係者は、7月18日の世界感染爆発を牽引したのは、アメリカ、ブラジル、インド、南アフリカと述べた。

24時間当たりの感染者数が70,000人を超えたアメリカでは、フロリダ州が新たな震源地になった。同州の新規感染者は10,000人台を堅持し、7月18日だけで90人以上が死亡した。

コロナウイルスとそれを封じ込める予防対策が高度に政治化されているブラジルでも症例が急増している。しかし、WHOは今週初め、同国の感染が指数関数的な増加を回避したとコメントした。

人口13億人超のインドでは、3月のロックダウンで感染拡大をある程度防いだものの、その後の緩和および経済活動再開に伴い、再び感染者が増加し始め、先日100万人を突破した。最悪の被害を受けている都市部(ムンバイ、バンガロールなど)では患者の激増に病院が対応しきれず、保健当局は医療崩壊直前と警告した。

【各国の感染状況/7月19日時点】

累計感染者累計死者新規感染者
(7月18日)
世界1,440万人60.3万人26万人
アメリカ378万人14.2万人65,389人
ブラジル210万人79,488人28,532人
インド108万人26,816人34,884人
南ア36.4万人5,033人13,285人

7月19日、香港の行政長官を務める林鄭 月娥(りんていげつが)氏は記者団に対し、24時間当たりの新規感染者数が過去最高を記録したと発表した。

香港は迅速なロックダウンによってコロナウイルスを封じ込め、WHOからもその対応を称賛されていた。今回新規感染者が100人超に達したことを受け、林鄭 月娥氏は新たな制限を課すと述べた。

今回、新たに不要不急の外出自粛および公務員の在宅勤務(原則)が指示された。また、屋内の公共スペースでのマスク着用も義務化。なお、公共交通機関利用時のマスク着用は既に義務化されている。政府は合わせてPCR検査体制を1日当たり10,000件まで拡充すると公表した。

香港保健当局によると、7月18日の新規感染者は108人、そのうち、83件が国内で発生、25件は海外から持ち込まれたものだった。

今回の新制限は、香港ディズニーランドがシャットダウンされてから数日後のことであり、関係者は人の往来が激しくなりクラスターを招いたと述べた。

ディズニーランドと同時にシャットダウンされた施設は、レストラン、バー、ジム、クラブなど。なお、今回の措置に対して、中国当局はコメントを発表していない。

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