ロックダウンの段階的な緩和を開始するも、経済復活への道は遠く険しい

先週、アメリカ国内で失業支援を求めた労働者は240万人。これにより、3月中旬から同支援を申請した人の合計は3,860万人に達した。

ロックダウンの段階的な緩和と解除が進み、経済活動再開と雇用の回復が期待されているにも関わらず、失業支援の申請人数は週当たり数百万人の状態を維持している。

3月末に記録した690万人をピークに数字はジワジワと減少し続けているが、コロナウイルスが発生する以前の週平均35万人を考えると、申請人数が高止まりしていることは明らかである。

今週、スティーブン・ムニューシン財務長官は、ロックダウンが長引くほどアメリカ経済の受けるダメージは大きくなり、それに伴い雇用も甚大な影響を受けるだろうと警告した。

現在、全50州でロックダウンの段階的な緩和もしくは解除が進められている。しかし、規制を取り払っただけで経済活動が元通りに戻ることはなく、欧州、アジア各国も同じ事態に陥りつつある。

先週新たに支援を受けた240万人、そしてこれまでに救済支援、手当等を受けた労働者たちは、日当たり労働、単発の仕事を受注するギグエコノミー状態での生活を強いられている。家族や住宅ローンを抱えている者の多くが安定した仕事、雇用を求めているため、3月以前の経済・雇用状況に戻すことが急務と言えるだろう。

同国内の企業は、先月だけで2,000万人以上の雇用を削減し、公式の失業率は14.7%に達した。なお、2月末時点の失業率は3.5%。わずか2カ月で10%以上増加したことになる。

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失業者

失業者の多くが、「解雇は一時的なもの」と考えている。トランプ大統領が”想定通り”と繰り返し発言しているので、その考えが浸透するのも致し方ないかもしれない。しかし、最近の調査によると、パンデミックによる雇用削減の40~50%が「恒久的なものである」と推定された。

経営者が最も恐れる”倒産”という事態を避けるためには、可能な限りコストを削減し、そのうえでコロナウイルスの蔓延するこの世界で生き延びる方法を模索しなければならない。倒産すれば従業員とその家族は路頭に迷う。グループ企業、取引している企業も大ダメージを受けるだろう。

ロックダウンを解除しても景気後退はまず避けられず、それに伴う生存競争を生き抜くべく、企業は雇用を削減する。食品の配送等でパンデミック以降も一定の収益を確保してきたUberは、3,000人以上の人員削減、世界各地のオフィスの一部を閉鎖すると発表した。

小売業界(業者)でも大量閉店が相次いでいる。今週、アメリカ発の人気ファッションブランドであるヴィクトリアズ・シークレットは、北米の約250店舗を閉鎖すると発表した。

英調査会社キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、ポール・アシュワース氏は「ロックダウンは企業の収益を大幅に悪化させ、雇用を喪失させた。これを取り戻すためにロックダウンの緩和や解除を進めているが、事態の改善は全く見込めず、むしろ悪化している」と述べた。

20日、米国国勢調査の行った調査によると、約2カ月前にパンデミックが発生して以降、世帯のほぼ半分が収入を失っていることが判明した。また、来月にはその37%がさらに収入を失うと予想されている。

アメリカ商務省は国民の支出が激減することで、企業や小売店の売り上げに甚大な影響が出ると危機感を強めている。4月の小売売上高は前年比の16.4%だった。海外からの観光客は期待できず、さらに内需まで減少すれば、企業は息の根を止められてしまうだろう。

24日、ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、アメリカの累計感染者数は約167万人、97,000人以上の死亡が確認された。

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