◎ミル湖はイラク全土で進行中の水危機を象徴する存在になっている。
イラクの首都バグダッドの南西約100kmに位置するミル湖は美しい景観で知られる人気観光地のひとつで、地域の生活を支える主要な漁場だった。
しかし、湖の水位は干ばつなどの影響で著しく低下し、湖の周辺に形成された肥沃な土壌は不毛の砂漠になった。
イラクで2番目に大きい人工湖であるミル湖は水位の低下とそれに伴う塩分濃度の上昇に悩まされており、多くの魚が死の危機に瀕している。地元の住民はミル湖をラザザ湖と呼んでいる。ミル湖はアラビア語で塩湖を意味する。
カルバラー県の漁師アブード氏はAP通信のインタビューの中で、「ラザザ湖の魚は生活の糧であり、水量が多かった1980年~1990年代にはキハダ、ビニー、コイなどの魚が山ほど釣れた」と語った。
ミル湖はイラク全土で進行中の水危機を象徴する存在になっている。イラクにつながる主要河川(チグリス川とユーフラテス川水系)の上流にはトルコ、シリア、イランのダムが建設され、一部の河川の水量は1980年代の半分以下に減少し、干ばつが危機に拍車をかけた。
地元メディアによると、ミル湖ではかつて数百の漁師家族が生計を立てていたが、その数はピーク時の半分以下に減少したという。アブード氏は、「生きた魚より死んだ魚の数の方が多い」と語った。
ミル湖は年々小さくなっており、干上がったエリアは魚の死骸で覆い尽くされている。
チグリス川とユーフラテス川はミル湖、ハバニヤー湖、サルサール湖、湿地帯のホーアー・アル・ダルマージなどに水を供給しており、バグダッドや周辺都市の水供給と農業を支えている。
ミル湖はユーフラテス川の洪水対策兼、灌漑(かんがい)対策として整備された。水量が多かった時はイラクの暑い夏を涼しく過ごす避暑地として人気を集め、多くの観光客が足を運んでいた。
しかし、ミル湖を含む主要な水源は水不足、干ばつ、ごみの増加などに直面しており、一部の湖や川は周辺の工場から排出される汚水でひどく汚染されたと伝えられている。
水資源省の顧問であるアウン・ディアブ・アブドゥラ氏はAP通信の取材に対し、「ミル湖は国の重要な水源のひとつだったが、近年急激に水位が下がり、都市の水源として運用することは難しくなった」と述べた。
ミル湖