◎モーシンの完全接種率は11月下旬時点で人口(約3,500人)の約74%に達し、陽性者はほとんど確認されていない。
ウクライナの小さな温泉街モーシンはコロナワクチンの展開で成功を収め、国のロールモデルとして注目を集めている。
保健当局によると、ウクライナのコロナワクチン接種率は政府の呼びかけと制限強化にもかかわらず低迷しており、完全接種率は12月9日時点で約29%にとどまっている。
ウクライナの新規陽性者と死亡者は9月初め頃からゆっくりと上昇し始め、11月初旬の1週間の陽性者は1日あたり約23,000件、死亡者は700人を超えた。ウクライナの人口は約4,400万人。
政府は爆発的な感染拡大に伴い、感染の深刻な地域を「レッドゾーン」に指定し公共の施設に閉鎖を命じたが、リヴィク州モーシンの温泉療養施設は全て営業を続けている。
モーシンの完全接種率は11月下旬時点で人口(約3,500人)の約74%に達し、陽性者はほとんど確認されていない。
自治体によると、町の成人の80%以上が地域内の温泉療養施設で働いているという。温泉はワクチン接種を終えた人、コロナから回復したと証明できる人、数日以内の陰性証明を持っている人のみ利用できる。
ヴィクトル・リアシュコ保健相は先週、モーシンの成功を国のロールモデルと呼び、他の自治体にもワクチンを積極的に展開するよう呼びかけた。リアシュコ保健相は声明の中で、「モーシンのワクチン接種率は群を抜いており、過去6カ月間死亡者を報告しておらず、感染爆発中の入院患者は1人だった」と述べた。
自治体はワクチンの効果を住民に分かりやすく説明し、マスクの着用と社会的距離の確保を呼びかけ、住民の命を守ったと称賛されている。自治体関係者は人口密度が低いことも功を奏したと謙遜しているが、ワクチンの展開成功は自治体の努力のたまものである。
ウクライナ政府はファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、シノバックワクチンの緊急使用を認めているが、ワクチン接種は思うように進んでいない。保健当局によると、過去数カ月間の重症患者の約96%がワクチン未接種者だったという。
国の主要な医療専門家は「政府に対する不信感」と「ワクチンに関する誤った情報の拡散」が展開を妨げたと指摘し、国民にモーシンを見習うよう呼びかけている。
モーシンの公立病院のゲンナディ・ユクシンスキー博士はAP通信のインタビューの中で、「コロナはワクチン、検査の徹底、そして自発的な感染予防でおおむね防ぐことができる」と述べた。「モーシンでは検査と濃厚接触者の追跡を徹底しています。また感染者が出た場合、住民は自主的に自宅にとどまり、外出する際のマスク着用と社会的距離の確保を遵守しています」
ユクシンスキー博士によると、11月下旬時点の町の累計感染者は14人で、症状は全員軽度だったという。
一方、政府は12月1日までに医師、教師、公務員、その他の民間労働者のワクチン接種を義務化した。公共交通機関や商業施設を利用する際は証明書の提示を求められる。
この決定は広範な抗議デモを引き起こし、首都キエフでは数千人が行進に参加した。現地メディアによると、デモの主催者は主に極右団体だったという。
モーシンのルシュラン・イニュツスキー市長はAP通信に、「春の全国封鎖で温泉療養施設は全て閉鎖し、町の経済は深刻なダメージを受けた」と語った。「もう一度同じような事態(封鎖)に陥れば、廃業を決断する施設が出ると思いました。私たちは秋から冬の感染再拡大を想定し、ワクチン展開キャンペーンを開始しました」
イニュツスキー市長によると、春の封鎖解除後、町の医師や医療当局者は住民に電話をかけ、ワクチンの安全性を説明したうえで接種を強く促したという。イニュツスキー市長は、「個別アプローチがワクチン接種の加速につながったと信じている」と述べた。
モーシンはミネラルウォーターの町としても有名で、19世紀のオーストリア・ハンガリー帝国時代から人気を集めていたと伝えられている。