◎ベラルーシ軍は12日の声明で、「今回の演習は隣国ポーランドが国境近くの軍事力を強化していることに対応するものである」と述べた。
11月12日、ロシア軍はベラルーシとポーランドの国境付近に空挺部隊を送り、ベラルーシ軍と合同軍事演習を行った。
ベラルーシ軍は12日の声明で、「今回の演習は隣国ポーランドが国境近くの軍事力を強化していることに対応するものである」と述べた。また空挺部隊は敵の違法行為を狙い撃つ訓練を実施したことも明らかにした。
ロシアは10日と11日に核弾頭を搭載できる戦略爆撃機をベラルーシに派遣し、訓練を行っている。ロシア政府は訓練後の声明で、「核対応爆撃機の派遣はベラルーシの防衛力強化に向けた取り組みを支援するもので、第三国を狙ったものではない」と述べた。
しかし、ロシアの国連大使、ドミトリー・ポリアンスキー氏はニューヨークの国連本部で、「派遣はポーランドとベラルーシの国境付近で展開している問題に対応するもの」と語った。
ポーランド、リトアニア、ラトビアはここ数カ月、国境を接するベラルーシから入国を試みる移民希望者の急増に悩まされてきた。移民は主にアフリカ、イラク、シリア、アフガニスタンの難民で構成されている。
独裁者のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は昨年8月の大統領選以来、多くのベラルーシ亡命者を受け入れてきたポーランドとリトアニアを敵視しており、移民をEUに大量に送り込むことで混乱を引き起こそうとしている。EUの指導者はベラルーシの移民送り出しを「ハイブリッド攻撃」と呼び、非難した。
国連安全保障理事会もベラルーシを非難したが、より強い文言を含む声明は常任理事国のロシアに却下された。
ポーランドとベラルーシの国境付近に集まった移民希望者は3,000~4,000人と伝えられている。移民希望者は主にドイツへの亡命を求めているが、ポーランドは国境付近に兵士12,000人を追加配備し、人々の入国を拒否した。
EUはベラルーシのさらなるハイブリッド攻撃を阻止するために、移民希望者の出発地である中東諸国に対応を呼びかけ、トルコは12日からベラルーシ行きの民間旅客機に搭乗できる人々を制限した。これにより、シリア、イラク、イエメンの市民はトルコ発ベラルーシ行きの便に搭乗できなくなった。
ベラルーシは空路で移民希望者を集めていると考えられており、トルコ発の便は主要な窓口のひとつと見なされていた。
イラク政府はベラルーシに入国したイラク市民のための帰国便を準備していると明らかにした。
また主要メディアによると、EUはロシアの国営航空会社であるアエロフロート・ロシア航空が移民の輸送に関与したと指摘し、制裁を検討しているという。アエロフロートは関与を否定している。
一方、ルカシェンコ大統領は11日、EUが新たな制裁を導入した場合、ベラルーシの国土を通過しEUに天然ガスを送っているパイプラインを遮断すると脅迫した。
これを受け、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は11日にウラジーミル・プーチン大統領と2日連続で電話会談を行い、移民とベラルーシへの対応について協議した。メルケル首相はベラルーシに圧力をかけるようプーチン大統領に要請したが、プーチン大統領はEUにベラルーシとの関係を修復し、移民を支援するよう促したため、協議は平行線をたどった。
ロシアとEUを結ぶガスパイプラインを遮断するというルカシェンコ大統領の脅迫は、原油および天然ガスの供給不足に伴う燃料価格高騰に悩まされているEU諸国を困惑させ、新たな懸念を引き起こした。
ベラルーシはロシアの半国営企業ガスプロムから多額のパイプライン通過料を受け取っている。なお、ガスを止めるかどうかを決めるのはベラルーシではなくロシアである。