◎ポーランド議会はポレグジット(ブレグジットの造語)の可能性を否定しているが、一部の保守的な議員は離脱を促す発言を繰り返しており、懸念が高まっている。
10月21日、EUの首脳は反抗的なポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相にEU法優位の原則を支持するよう圧力をかけ、対話で問題を解決するよう強く促した。
ポーランドの憲法裁判所は今月7日、ポーランドの憲法はEU法より優先されると裁定し、EU法優位の原則を否定した。この判決に主要なEU首脳と欧州委員会は強い懸念を表明し、EU法の完全性を確立するためにあらゆることをすると誓い、EU予算の差し押さえを含む制裁を科すと示唆した。
ポーランド政府はEUの「脅迫」を非難したが、多くのEU首脳がEU法優位の原則は揺るがず、ポーランドの国民の大多数もそれを認めていると主張した。
ポーランド議会はポレグジット(ブレグジットの造語)の可能性を否定しているが、一部の保守的な議員は離脱を促す発言を繰り返しており、懸念が高まっている。
ポレグジット問題は21日に開幕したEUサミットの主要議題のひとつになる予定。
<EUサミットの主な議題:10月21日~22日>
・コロナウイルスとワクチン関連の課題
・エネルギー価格の高騰問題
・気候変動対策とCOP26
・ベラルーシ問題(不法移民の流入)
モラヴィエツキ首相はサミット前の記者会見で、「ポーランドはEUの恐喝には屈しない」と述べた。欧州委員会はポーランドに割り当てられたコロナウイルス回復予算570億ユーロ(約7.6兆円)をまだ承認しておらず、紛争が解決するまで承認しない可能性がある。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は記者団に、「法の支配はEUの根幹である」と述べ、EU法優位の原則を支持した。「ポーランドの憲法裁判所の判決は圧力では解決できないため、私たちは話し合わなければなりません...」
フランスのエマニュエル・マクロン大統領はメルケル首相の横に立った。現地メディアによると、マクロン大統領はサミットに先立ち、モラヴィエツキ首相と会談したという。
マクロン大統領は記者団に、「ポーランドに懸念を伝え、共通の原則の回復に向けた対話を行うよう求めた」と述べた。
ベルギーのアレクサンダー・デ・クロー首相は、「レッドラインを越えてはならない」とポーランドをけん制した。「EU加盟で得られる利点(ゼロ関税など)を維持したいのであれば、ルールに従ってください」
一方、主要メディアによると、21日の会談で法の支配に関する協議はそこまで白熱しなかったという。AP通信の取材に応じた欧州委員会の高官は、「首脳らは対決姿勢を取らなかった」と述べた。
しかし、オランダのマルク・ルッテ首相はサミット後の記者会見で厳しい姿勢を示した。「憲法裁判所の判決は、私たち全員で議論しなければならない重要な問題です。問題が解決しない場合、ポーランドはEU予算関連の大きな問題に直面するでしょう...」
これに対し、ハンガリーの保守的なオルバーン・ヴィクトル首相はポーランドの憲法裁判所を支持し、「EUの条約にEU法優位の原則は含まれていない」と述べた。「欧州委員会の脅迫は加盟国に対する権限を完全に超えています。ポーランドはヨーロッパで最高の国のひとつです。制裁を受ける必要はありません。ばかげています」
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は19日、フランスの欧州議会でモラヴィエツキ首相と激突し、「行動を起こす」と誓った。フォン・デア・ライエン委員長によると、EUはポーランドの憲法裁判所に異議を唱え、ポーランドに対するEU予算を差し控え、EU加盟国に与えられた権限を一時停止するという。