◎ビータール裁判官はベイルート港に硝酸アンモニウムが保管された経緯や当時の責任の所在などを明らかにしたいと望んでいた。
9月27日、レバノンのベイルート港で昨年8月に発生した爆発事故の調査を主導している主任裁判官は、旧政権高官からの圧力が高まったことを受け、事故の調査を中断した。
タレク・ビータール裁判官は尋問を拒否した元公共事業大臣のユセフ・フェニアノス氏の逮捕状を9月16日に発行し、さらに事故当時と現在の港の責任者を尋問すると発表していた。
地元メディアによると、ビータール裁判官は27日に予定されていた元軍事諜報部長の尋問をキャンセルしたという。同日、港の爆発物の保管に関与したとされるヌーハド・マチュヌーク元内相は、ビータール裁判官の解任を求める異議申し立てを裁判所に提出した。
ビータール裁判官の前任であるファディ・ソーワン裁判官は今年2月、爆発物の保管に関与したとされる政府高官を非難した直後に異議申し立てを受け、解任された。
正義を追及するビータール裁判官が解任された場合、事故調査は深刻な影響を受けると予想されている。レバノンを支配するイスラム過激派組織ヒズボラを含む政府高官たちは事故調査の中止を望んでおり、3人目の裁判官がビータール裁判官の仕事を引き継ぐ可能性はほとんどないと信じられている。
ベイルート港の倉庫に放置されていた硝酸アンモニウム約2,750トンは2020年8月4日に爆発した。公式記録によると、爆発により少なくとも214人が死亡し、6,000人以上が負傷し、約30万人が住居を失った。
爆発は史上最悪と呼ばれている致命的な通貨危機とハイパーインフレを加速させ、貧困ライン以下で生活する国民の割合は人口の50%以上に急増した。国際社会は政府の腐敗と管理ミスが正されていないとして、財政支援を却下している。
遺族はヒズボラに管理されている政府を信用しておらず、国際的な調査を要求している。レバノン政府の上級高官は不処罰の文化と強力な免責で保護されており、起訴されることはない。
ビータール裁判官は港に硝酸アンモニウムが保管された経緯や当時の責任の所在などを明らかにしたいと望んでいた。
爆発で15歳の息子を失ったミレイユ・バザジー・コーリー氏はAP通信の取材に対し、「ビータール裁判官は最後の希望だったが、ヒズボラには勝てなかった」と述べた。「元閣僚の異議申し立ては当時の政府が事故に関与していたことを証明しています...」
コーリー氏は政府の妨害工作に合法的に立ち向かうと誓った。「腐敗した政府は息子を殺し、娘を傷つけ、家を壊し、ベイルートをバラバラにしました...」
ビータール裁判官は7月、爆発物の保管に関与したとされる政府高官に対する調査を開始すると発表し、当時のハッサン・ディアブ首相と3人の元閣僚を召喚した。しかし、裁判所の命令に応じた高官はひとりもいなかった。
ヒズボラの管理下に置かれている議会は、裁判所に出頭するよう命じられた政府高官の免責を解除できなかった。政府高官は強力な免責で保護されており、解除されない限り裁判所は手出しできない。