◎アメリカとNATOの関係はドナルド・トランプ前大統領の影響で急速に悪化したが、この日バイデン大統領は関係の改善に注力し、「NATOのアメリカ」としてコミットメントを発表した。
2021年6月14日/ベルギー、ブリュッセルのNATO本部、ジョー・バイデン大統領(AP通信/Patrick Semansky)

6月14日、アメリカのジョー・バイデン大統領はNATOサミットの中で、ロシアの挑発的な行動に対処するよう同盟国に呼びかけた。

NATOの指導者たちはバイデン大統領の呼びかけに応じ、ロシアと中国の悪意のある行動を非難する声明に加わった。

アメリカとNATOの関係はドナルド・トランプ前大統領の影響で急速に悪化したが、この日バイデン大統領は関係の改善に注力し、「NATOのアメリカ」としてコミットメントを発表した。

NATOの襟章を身に着けたバイデン大統領は16日に計画されているウラジーミル・プーチン大統領との首脳会談に先立ち、記者団に、「西側に対するロシアのものと思われるサイバー攻撃や安全保障に関する様々な問題に対して圧力をかける」と述べた。

また、「プーチン大統領が終息に向けた道を選ぶのであれば、協力できる分野があることを伝えるつもりだ」と付け加え、問題の解決に向けた前向きな協議を望んでいると示唆した。「...しかし、プーチン大統領が協力を選択しなかった場合、私たちは厳しく対応します」

バイデン大統領は今回のヨーロッパツアーの中で、NATOの同盟国と結束してロシアおよび中国に対抗する共同声明を発表することを目指している。

これを受け、NATOの指導者たちは14日の声明で中国を「絶え間ない安全保障上の課題」と述べ、「中国は世界秩序を弱体化させようとしている」と宣言した。また、中国の「強制政策」「不透明な軍隊の近代化」「誤った情報の意図的な発信」について懸念を表明した。

ロシアに対しては、欧州諸国の国境付近における軍事活動、戦争行為、ロシアの戦闘機による領空侵犯を非難した。

NATOは声明の中で、パートナーであるウクライナとジョージアを引き続き支援し、同盟に近づけることを約束すると述べた。

ロシアはジョージアの分離主義者(南オセチア国とアブハジア国)とウクライナの分離主義者(ドネツク国とルガンスク国)の活動を支援し、紛争を誘発し、両国を内側から引き裂いた。

2021年6月14日放映されたNBCニュースのインタビュー、ウラジーミル・プーチン大統領(Maxim Blinov/Sputnik/Kremlin/Pool/AP通信/NBCニュース)

バイデン大統領は13日に閉幕したG7サミットの中で、中国政府のウイグル人やその他のイスラム系少数民族への人権侵害を非難するよう呼びかけ、共同声明に盛り込むことに成功した。しかし、同盟国の対中国政策には温度差が残っている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相はNATOサミットの中で、「ロシアと中国は一部の地域のパートナーであり、両国を脅威と呼ぶ声明は誇張されるべきではない」と指摘した。「中国はドイツの最大の貿易相手国であり、適切なバランスで対応することが重要だと考えています...」

一方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、テロとの戦い、ロシアに関連する安全保障問題、中国の差し迫った危険な動きから目をそらさないよう同盟国に促した。「私たちの努力を分散させないこと、そして中国との関係に偏見を持たないことが非常に重要だと思います」

イギリスの中国大使館は14日、「G7の首脳宣言は中国を中傷するものであり、内政に恣意的に干渉した」と声明を発表したが、NATOの宣言に対する即時の反応はなかった。

バイデン大統領はNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長との協議の中で、同盟憲章第5条(集団防衛)に対するアメリカのコミットメントを強調した。「アメリカは第5条を神聖な義務とみなします。私はNATOにアメリカは同盟国と並んで立っていると知ってもらいたい...」

ベルギーのアレクサンダー・デ・クルー首相は、「バイデン大統領の存在は大西洋横断パートナーシップの関係が見直されたことを意味する」と述べた。「NATOの同盟国はトランプ前大統領がもたらした加盟国間の争いを乗り越えようとしています」

一方、バイデン大統領は、2016年以来ロシアと緊密に連携するトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とも会談した。

バイデン大統領は昨年の大統領選挙期間中にエルドアン大統領を「独裁者」と呼び、トルコ当局の怒りを買った。そして4月、バイデン大統領はオスマン帝国時代のアルメニア人大量虐殺と強制送還を正式に「大量虐殺」と宣言し、トルコ当局を激怒させた。

2021年6月14日/ベルギー、ブリュッセルのNATO本部、ジョー・バイデン大統領(右中央)とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領(左中央)(AP通信/Patrick Semansky)

NATOサミットアジェンダ

1.NATOの戦略を改訂する
・ロシアの行動に対する新たなアプローチを構築する。
・中国の覇権主義に対抗する。
・テロ、サイバー攻撃、気候変動などの国境を越えた脅威に対処する。
・これらの新しい戦略的概念は、2022年のNATOサミットで採択される予定。

2.サイバー攻撃への対応
・同盟国はNATOの新しいサイバー防御ポリシーを承認する。
・同盟国を含む同盟国との関係を強化し、破壊的なランサムウェアを含む国家および非国家主体による悪意のあるサイバー攻撃に対処し、攻撃を受けた場合の回復力を強化する。
・重要なインフラへの攻撃に対応する。
・サイバー攻撃に対する新しい戦略的ガイダンスを構築する。
・同盟国の自由な電気通信ネットワークの安全を保障するという権利の重要性を確認する。

3.NATOの力を高める
・同盟国はNATOの技術的優位を維持することの重要性を認識したうえで、NATOに対する技術協力を促進し、同盟国の防衛と安全を強化する新しい技術の採用を加速させ、新たな防衛イノベーションアクセラレーター(資金やノウハウなど投資をサポートする組織)を立ち上げる。

4.気候変動を打ち負かす
・同盟国は気候安全保障行動計画に同意したうえで、NATOが気候変動の安全保障に大きな影響を与える主要な国際組織になるための取り組みを加速させる。
・パリ協定に基づく国の公約に沿って、軍事活動や施設から排出される温室効果ガスを削減することに合意する。
・定期的に地球規模の気候と安全保障の会談を実施することに合意する。

5.抑止力と防衛力の強化
・同盟国は、ロシアなどの脅威に対応するために、NATOの抑止力と防衛態勢を強化する新しい軍事概念と戦略の実施にコミットする。
・NATOはウクライナとその周辺地域におけるロシアの活動を監視し続ける。

6.責任の共有
・同盟国はウェールズ防衛投資誓約に再コミットし、NATOに資金を提供する。

7.NATOへの投資
・同盟国はサミットの決定を実現するために、NATOに必要な人員およびリソースの配置に協力すると約束する。
・同盟国は現在および将来の安全保障上の課題に対処するNATOの能力を強化するために、追加のリソースの提供に合意する。

8.協議と結束の強化
・同盟国は、個人および集団の安全保障に関連するすべての問題におけるNATO協議を強化することに合意する。また、個人の自由、人権、民主主義、法の支配など、共通の価値観へのコミットメントを再確認する。

9.強力な社会の構築
・同盟国は安全に対する脅威を認識したうえで、国および組織の回復力が社会、市民、共有価値の防衛に不可欠であることを確認する。
・同盟国はサプライチェーン、重要なインフラストラクチャ、エネルギーネットワークのセキュリティ、パンデミックや自然災害への備えなどを概説するために、新たなコミットメントを発行する。

10.パートナーシップの強化
・同盟国はEUおよびインド太平洋の同盟国を含むパートナーとの対話および協力を強化するで、規則に基づき国際秩序を保護するNATOの能力を強化する。
・同盟国はNATOの門戸開放政策に再びコミットする。これは、同盟国の価値観を共有し、必要な責任と義務を果たすと宣言したすべてのヨーロッパ諸国に加盟への道を提供するものである。

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