◎国連安全保障理事会は16日、イスラエルとガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスの戦闘の停止を要求する3度目の緊急会合を開催したが、共同声明は発表できなかった。
5月16日、国連安全保障理事会はイスラエルとパレスチナのガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスの戦闘の停止を要求する3度目の緊急会合を開催した。
リンダ・トーマス・グリーンフィールド米国連大使は緊急会合後の声明で、「アメリカは戦闘を止めるために、外交ルートを通じてたゆまぬ努力を続けている」と語った。しかし、安保理は戦闘の即時停止などを求める共同声明に合意できなかった。
ジョー・バイデン大統領は一部の進歩的な民主党員からイスラエルに圧力をかけるよう求められているが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相との新たな電話会談は行われておらず、16日時点で圧力を強める兆候は見られなかった。
グリーンフィールド国連大使は、「紛争の再開は数十年前の戦争の交渉と両国の関係をバラバラに打ち砕くだけだ」と警告した。
イスラエルに最も近い同盟国のアメリカは、安保理に戦闘停止声明を出すよう求めた中国、ノルウェー、チュニジアの努力を阻止している。
イスラエルのベニー・ガンツ国防相は16日、アントニー・ブリンケン国務長官が派遣したハディ・アムル国務次官補と会談し、「アメリカの支援に感謝する」と述べた。
一方、現地メディアによると、ブリンケン国務長官は新たな中東戦争勃発の危機にもかかわらず、北欧諸国をめぐるツアーに出発したという。国務長官は移動中、さらなる戦闘悪化を回避するための交渉を行っているエジプトとその他の関係国に電話をかけ、「緊張を緩和し、暴力を止めなければならない」と述べた。
米下院諜報委員会の議長、アダム・シフ下院議員(民主党)はCBSニュースのインタビューの中で、「バイデン大統領はパレスチナとイスラエルに圧力をかけ、紛争を解決するための交渉に復帰させなければならない」と語った。「政府は一連の暴力を停止させたうえで、長年の紛争の解決に向けた交渉を開始するようイスラエルとパレスチナ自治政府にもっと強く圧力をかける必要があります」
イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領したが、国際社会はこれを認めていない。
聖地エルサレムを奪われた数百万人のパレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸地区に押し込められ、みじめな生活を送っている。
AP通信によると、ガザ地区の死者は5月16日時点で子供42人と女性33人を含む188人に達し、1,200人以上が負傷したという。ハマスは上級司令官数十人の死亡を認め、他のジハード組織の幹部も数十人死亡したと伝えられている。イスラエルでは子供2人を含む10人の死亡が確認された。
バイデン大統領は15日に行われたネタニヤフ首相との電話会談の中でハマスのロケット攻撃によるイスラエルの被害に焦点を当て、国連やエジプトを含む関係諸国が求めている停戦には言及しなかった。
ネタニヤフ首相は16日に放送されたテレビ演説の中で国民に、「イスラエル軍はハマスに大きな代償を支払わせる」と誓ったうえで、「代償を支払わせるためには時間がかかる」と述べ、紛争は激化する可能性があると示唆した。
イランを含む一部の中東諸国は、57ヵ国で構成されるイスラム協力機構のオンライン会合の中で、「UAE、バーレーン、その他の近隣諸国はイスラエルとパレスチナの二国間協定に署名し、双方の関係を正常化させたが、イスラエルは国際的な努力を破壊した」と述べた。
イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相は、「パレスチナの子供たちは、イスラエルが正常化と主張しているものに殺された」と述べた。
安保理の緊急会合にオンラインで参加した国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、「全ての当事者は、即時の停戦に向けた取り組みに関与しなければならない」と述べた。「イスラエルとハマスの第四次中東戦争は死、破壊、絶望のサイクルを永続させるだけであり、中東の共存、平和、希望を地平線のかなたに押しやるでしょう...」
今回の安保理会合ではオンラインで参加した8人の外相が停戦を要求し、ほぼ全員が戦闘の即時終結を求めたが、共同声明は発表できなかった。
AP通信によると、ハマスは17日早朝にイスラエル南部にロケット弾を数十発発射したという。これを受け、イスラエル軍はガザ地区のいくつかのエリアへの空爆を開始した。
ガザ地区の保健当局によると、16日だけで子供10人と女性16人を含む42人の死亡を確認し、戦闘開始以来最悪の被害を確認したという。イスラエル軍は16日深夜にガザ地区の通りとビル3棟を爆撃したと伝えられている。
現地メディアによると、ガザ地区の狭いエリアに押し込められた数千から数万人のパレスチナ人は空爆を知らせるサイレンに反応したものの、空爆エリアから全住民を退避させることは到底できず、多くが建物の崩壊や爆発に巻き込まれたという。
ロイター通信の取材に応じたパレスチナ人のリヤド・エシュクンタナ氏は、「最も安全と信じていた自宅の一室が爆撃された」と述べた。「私は娘たちの部屋に走りました。妻が娘を抱きかかえ部屋から出ようとしたとき、2回目の空爆で屋根が吹き飛びました。気が付くと私は瓦礫の中にいました」
エシュクンタナ氏の妻と3人の子供は死亡した。
イスラエル軍は空爆後の声明で、対象地域の地下に掘られたハマスのトンネルを破壊するために空爆したと述べた。「トンネルは崩壊し、その近くにあった建物も爆発に巻き込まれました。イスラエル軍は民間人の死傷者を減らすための措置を適切に講じていますが、ハマスは民間人を盾にしています...」