◎米軍の撤退はタリバンを含むイスラムジハード組織との長きにわたる戦いで勝ち取ったアフガニスタンの民主主義、女性の権利、統治で得られたその他の利益を危険にさらす可能性がある。
2021年4月13日/ワシントンD.C.議会議事堂、ジョー・バイデン大統領(AP通信/J.Scott Applewhite)

報道によると、ジョー・バイデン大統領は9.11同時多発テロから20年の節目を迎える2021年9月11日までにアフガニスタンに駐留する米兵2,500人の撤退を完了させると述べたという。

この決定は、トランプ前大統領が昨年2月末にタリバンと締結した和平合意に基づく2021年5月1日の撤退期限に反している。政府高官は9月11日を「絶対的な期限」と述べた。

バイデン大統領は米兵2,200人以上を殺し、20,000人以上を負傷させ、1兆ドル(110兆円)以上の費用をかけたイラク・アフガニスタン戦争の終結を目指し、米軍撤退を決断した。

アルカイダの9.11同時多発テロに対するアメリカのイラク侵略戦争によりサダム・フセイン政権は陥落し、イラクの主要都市は絨毯爆撃で粉々に破壊された。しかし、ウサーマ・ビン・ラーディン率いるアルカイダおよび他のイスラムジハード組織はアフガニスタンに避難し、今も活動を続けている。

米軍の撤退はタリバンを含むイスラムジハード組織との長きにわたる戦いで勝ち取ったアフガニスタンの民主主義、女性の権利、統治で得られたその他の利益を危険にさらす可能性がある。タリバンは極めて強力であり、今もアフガンの広い範囲を支配している。

バイデン大統領は先月、5月1日の撤退期限を守ることは困難とインタビューの中で示唆していた。当局者によると、完全撤退に伴う準備は5月1日までに始まる予定だという。

撤退期限を9月11日に設定した理由は明らかにされていないが、専門家は、「バイデン大統領はアルカイダやタリバンを含むイスラムジハード組織にアフガニスタン政府との交渉に参加し、完全なる和平に向けた本格的な話し合いを再開するよう圧力をかけた」と述べた。「バイデン大統領は、アメリカは9月11日を決して忘れず、米軍撤退後にアフガニスタン政府に対する攻撃が過熱すればただではおかない、とイランとその支援国家に圧力をかけました」

政府当局者によると、バイデン大統領は、「撤退期限はアフガニスタンの状況に影響を受けず、絶対的でなければならない」と述べたという。「バイデン大統領は9月11日までに米軍の完全撤退を実現したいと述べ、条件付きの撤退表明はアフガニスタンに永遠にとどまることを意味するだろうと言いました」

伝えられるところによると、国防当局は5月1日までの完全撤退に反対し、「米軍の撤退はタリバンを含む他のジハード組織の動きとアフガンの治安状況に基づいて決めるべき」と主張したという。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は13日の記者会見で、「バイデン大統領は14日にアフガン撤退と今後のスケジュールを含む声明を発表する」と述べた。また、バイデン大統領はアフガン戦争に対する「軍事的解決策」はなく、米軍はあまりにも長い間そこにとどまり過ぎたという趣旨の発言をしたと述べたが、「軍事的解決策以外の解決策」の詳細は明らかにしなかった。

匿名を条件にAP通信の取材に応じた政府当局者は、バイデン大統領の撤退計画を認めたうえで、14日に発表する情報の一部を提供した。

当局者によると、アフガニスタンに残る米兵は、緊急時にアフガンの外交官を保護するごく一部の要員に限られるという。当局者は9月11日以降もアフガンに駐留する正確な人数を明らかにしなかったが、アフガンの米兵の数は過小評価されていると述べた。

当局者によると、アフガンの米兵の数は公式発表の2,500人より数百人多く、秘密作戦またはテロ対策任務に対処する特殊作戦部隊が含まれている可能性があり、それらの非公開要員はしばしば諜報機関の職員と協力しているという。「バイデン大統領が提示する新しいタイムラインは、米軍の安全で秩序ある撤退を可能にするでしょう」

しかし、米軍の撤退はアフガニスタン軍とNATO連合軍に対するタリバンや他のイスラムジハード組織の攻撃の激化を招き、終わりの見えないアフガニスタン戦争をエスカレートさせる可能性がある。

2022年の世界的な課題の動向をまとめた諜報機関の報告書によると、アフガニスタン政府とタリバンの和平協定が合意に達する見通しは低く、タリバンは戦場で大きな戦果を上げる可能性が高いという。また、米軍が撤退を中止した場合もアフガン政府とNATOはタリバンの支配に苦労するだろうと述べた。

新しい撤退期限に対する米議会の反応はまちまちだった。

共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は、「平和を確立せずにアフガンから撤退することは大きな間違い」と述べた。「タリバンは打ち負かされておらず、今撤退すればアメリカのリーダーシップは確実に後退するでしょう」

上院軍事委員会のジム・インフーフ上院議員(共和党)は、「無謀で危険な決定」とバイデン大統領を非難した。「撤退は条件(和平協定)に基づくべきであり、恣意(しい)的な期限の設定はNATOと米軍を危険にさらし、テロリストの繁殖地を作り、致命的な内戦につながる可能性があります」

同委員会のジャック・リード上院議員(民主党)は、5月1日の完全撤退を約束したのは共和党のトランプ前大統領だったと述べた。「アメリカはアフガニスタンの市民をテロ攻撃から保護することに重大な関心を持っていますが、他の分野にも注目しなければならず、米兵の保護も意識しなければなりません」

ニューハンプシャー州選出の民主党員、ジーン・シャヒーン上院議員は「失望」を表明した。「アメリカは多くの犠牲を払い、アフガニスタンの治安の回復に貢献しました。しかし、今、安全と治安を確立していない状態で徹底を開始すれば、これまでの努力は水の泡になるかもしれません

タリバンのスポークスマン、ザビアラ・マジャヒッド氏はAP通信の取材に対し、「私たちは正式な発表を待っている」と述べた。

2021年4月12日/ワシントンD.C.ホワイトハウス(AP通信/パトリック・セマンスキー)
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