◎ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワルニー氏は、昨年8月にソビエト製神経ガス「ノヴィチョク」をロシアのエージェントに塗布され死にかけたが、ドイツの病院で治療を受け九死に一生を得た。
3月1日、国連の専門家はロシアの野党指導者アレクセイ・ナワルニー氏に対する神経ガス攻撃の独立した調査を行うよう国際社会に呼びかけた。
国連特別報告者のアグネス・カラマール氏とアイリーン・カーン氏は、ナワルニー氏の毒殺未遂事件は「ロシア政府を批判する者は不幸な結果に直面するという警告を送ることが狙いだった」と述べた。
両氏は声明の中で、「ロシア当局の不十分な対応、禁止されている化学兵器の使用、新たな暗殺方法を考慮すると、独立した国際調査で速やかに事実を検証する必要があると私たちは信じています」と述べた。
ナワルニー氏は昨年8月にソビエト製神経ガス「ノヴィチョク」をロシアのエージェントに塗布され死にかけたが、ドイツの病院で治療を受け九死に一生を得た。
ドイツ、フランス、スウェーデンの研究所および化学兵器禁止機関によるテストの結果、ナワルニー氏に塗布された神経ガスはノヴィチョクであることが判明したが、ロシアは関与を否定している。
昨年12月、ナワルニー氏と同氏を支援する団体は、連邦保安庁(FSB)の高官とされる男性との電話の録音を公表し、ノヴィチョクの使用は当局の指示によるものだと主張したが、ロシアはこの訴えを却下した。
カラマール氏とカーン氏は昨年12月にロシア当局に提出した公式書簡の内容を公表し、「ノヴィチョクの入手経路などを調査することが重要です。ナワルニー氏から採取したノヴィチョクのサンプルと合致するものは、ロシア国内でのみ確認されています」と述べた。
書簡には、「ナワルニー氏は当時、ロシア政府の厳しい監視下に置かれており、当局の知らないうちに禁止されている化学物質で第三者から攻撃される可能性は低い」と書かれていた。
これに対し、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は記者団に、「ナワルニー氏がモスクワで毒殺されかけたことを証明するサンプルやその他の資料をロシアと共有しなければならない。それを拒否したドイツは国際的な調査にかけられるべきだ」と主張した。
ナワルニー氏は先月17日に帰国した直後に逮捕された。野党関係者とナワルニー氏の支持者たちは全国規模の抗議集会で同氏の釈放を要求したが、当局はこれを厳しく取り締まり、数千人を警棒で打ち負かし、逮捕した。
先月末、ナワルニー氏は執行猶予の条件に違反した罪で秘密裁判にかけられ懲役2年8カ月を言い渡された。なお、同氏は2014年の横領事件で執行猶予付きの有罪判決を受けたが、被害にあったと考えられている企業は「そもそも事件などなかった」と当局の主張を却下し、欧州人権裁判所(ECHR)もナワルニー氏を陥れる違法行為と裁定した。
先週、ロシアはECHRのナワルニー氏釈放命令を却下し、同氏をモスクワ郊外の強制収容所に投獄した。
当局はナワルニー氏をどの刑務所に投獄したかは明らかにしていないが、現地メディアはモスクワの東85kmのポクロフ市と報じた。ここはロシアの刑務所の中でも特に厳しい規則を採用していると伝えられており、元受刑者はAP通信の取材に対し、「ナワルニー氏は毎日検査に直面し、他者と話すことを禁じられるだろう」と述べた。
ロシアのミハイル・ガルベリン副法務大臣はECHRに提出した書簡の中で、「ナワルニー氏の釈放命令は違法であり、容認できない」と述べている。