◎ティグライの暫定地方政府当局者は、「緊急援助が届かない場合、数十万人が餓死する可能性がある」と述べた。
ティグライ緊急調整センター(ECC)によると、エチオピア北部のティグライ地域で「数十万人が餓死する可能性がある」という。
ECCはエチオピア政府が運営しており、同地域で発生した紛争後の現地の状況を調査および評価している。
政府軍は昨年11月末にティグレ人民解放戦線(TPLF)との戦いに勝利したと宣言した。
しかし、各地で散発的に戦闘が続いており、国連はティグライ地域の現状を、「極めて深刻な人道的危機に直面している」と評価した。
ECCの報告によると、同地域には十分な食料が行き渡っておらず、栄養失調のリスクが高まっているという。
ECCは国連の報告書を引用したうえで、「ティグライ地域の約450万人が緊急食糧援助を必要としている」と述べた。
同地域の住民は500万~700万人と推定されている。なお、隣国スーダンの難民キャンプに非難した住民は50,000人以上と伝えられている。
国連は、「ティグライ地域への物資輸送ルートの一部はまだ制限されているが、利用可能なルートで援助物資を運んでいる」と述べた。
現地のインターネットは紛争の影響でほぼ遮断されている。また、戦闘が続いている影響で封鎖状態にあるエリアもあるという。
ECCの会合に出席した関係者によると、「ティグライ地域は極めて悲惨な状況にある」という。
ティグライの暫定地方政府当局者は、「食料品だけでなくあらゆる物資が不足している。また、生計手段は略奪されるか破壊されており、緊急援助が届かない場合、数十万人が餓死する可能性がある」と述べた。
暫定地方政府当局者:
「人々は飢え、死にかけている。眠っている間に死んだ者も報告されている」
別の当局者によると、「ティグライの様々な地域を歩いて回っている途中、食べ物を求める人々に何度も声をかけられた」という。
政府軍は昨年11月初めにティグライ地域を支配するTPLFとの戦闘を開始した。
エチオピアのアビィ・アハメド首相は開戦時の声明で、「軍は法と秩序を回復し、犯罪集団を裁判にかけるために戦う」と述べた。
11月末の勝利宣言以降、TPLFのリーダーは姿を消しており、政府は追跡作戦を継続している。
エチオピア、ティグライ地域
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年12月23日、ベニシャングル・グムズ地域(民族境界線沿い)で虐殺事件が発生し、100人以上が死亡。
・2020年12月、エチオピア国防軍は、ティグレ人民解放戦線(TPLF)の指導者の所在に関する情報に約25万ドル(2,600万円)の懸賞金をかける。
・2020年12月11日、エチオピア政府、北部ティグライ地域の難民キャンプから逃れた「エリトリア難民数千人」を元の難民キャンプに戻すと発表。
・2020年12月8日、エチオピア政府、ティグライ地域の検問所を突破しようとした国連職員に発砲。
・2020年12月、国連とエチオピア、ティグライ地域への援助を許可する協定に署名。
・2020年12月1日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、難民の栄養失調と飢餓を警告。
・2020年11月29日、赤十字病院、医療用物資が「危険なほど不足」していると警告。
・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。
・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始。
・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。
・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。
・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。
・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。
・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃。
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。