◎ロシア、アゼルバイジャン、アルメニアの首脳は、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争で麻痺した地域の輸送ルートの再開について話し合った。
2021年1月11日 ロイター通信/ロシア、アゼルバイジャン、アルメニアの首脳

1月11日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はクレムリンにアゼルバイジャンとアルメニアの首脳を招き、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争で麻痺した地域の輸送ルートの再開について話し合った。

昨年11月、ロシアはアゼルバイジャン軍とアルメニア軍の数週間に渡る激しい戦闘を終結させた。この戦闘の死亡者は両軍合わせて6,000人以上と伝えられている。

プーチン大統領はイルハム・アリエフ大統領(アゼルバイジャン)とニコル・パシニャン首相(アルメニア)に対し、「和平協定は数十年続いた戦争の全面的な解決の基盤を築いた」と述べた。

11月10日に発効した和平協定により、アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフの主要都市と周辺地域の大部分を取り戻した。

ナゴルノ・カラバフは公式にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、1994年に終結した紛争以来、アルメニア政府の支援を受けるアルメニア民族軍の支配下に置かれていた。

9月下旬に両軍の敵意は急速に高まり、戦闘の結果、アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフの主要都市に侵攻し、アルメニアは同地の支配権を放棄せざるを得なくなった。

アゼルバイジャン市民は和平協定を「歴史的勝利」と祝った。一方、領土を奪われたアルメニアでは数千人規模の抗議活動が発生し、野党と抗議者はパシニャン首相の辞任を求めた

一部の抗議者は、この日の3カ国首脳会談を防ぐためにアルメニアの高速道路と空港を占拠しようとしたが、警察に解散させられたと伝えられている。

パシニャン首相は、「和平協定はナゴルノ・カラバフの完全制圧を防ぐ唯一の道だった」と取引を擁護している。

プーチン大統領は冒頭の挨拶後、アリエフ大統領とパシニャン首相に、「地域の輸送ルートの再開に向けた具体的な動きを話し合う3カ国の作業部会を設立する」と述べた。

ウラジーミル・プーチン大統領:
「協定と地域の回復に向けた動きは、アルメニアとアゼルバイジャンの両市民と地域全体に利益をもたらすだろう」

アリエフ大統領は輸送ルートの再開を歓迎したうえで、「提案は地域の安定につながります。ナゴルノ・カラバフ紛争は過去のものになりました」と述べた。

これに対しパシニャン首相は、「ナゴルノ・カラバフの正式な扱いはまだ確定していない」とアリエフ大統領の発言に異議を唱えたが、輸送ルートの回復計画は歓迎すると述べた。

2020年12月5日 AP通信/アルメニア、首都エレバンの共和国広場

和平協定(11月10日01:00発効)

・アゼルバイジャンは、紛争中に奪取したナゴルノ・カラバフの一部地域を保持。

・アルメニアはナゴルノ・カラバフのいくつかの地域から撤退する

・ロシアの平和維持軍1,960人を最前線に配備し、違法行為を防ぐ。

・トルコの平和維持軍も監視プロセスに加わる。

・ナゴルノ・カラバフの「解放エリア」にロシアとトルコの統制センターを設置する。

2020年11月3日 AP通信/ナゴルノ・カラバフ、ステパナケルト

ナゴルノ・カラバフについて知っておくべきこと

・2020年12月13日、アゼルバイジャンの国防省、アルメニア軍の攻撃で兵士4人が殺害されたと発表。

・2020年12月12日、アルメニアとアゼルバイジャン当局、ナゴルノ・カラバフ紛争の和平協定に違反したとお互いを非難。

・2020年12月5日、アルメニア、ニコル・パシニャン首相の辞任を求める大規模な抗議活動が行われる。

・2020年12月1日、アゼルバイジャン政府、アルメニア軍から取り戻したナゴルノ・カラバフの一部地域の開拓を完了したと宣言。

・2020年11月16日、トルコ議会、アゼルバイジャンとアルメニアの和平協定を監視する平和維持軍派遣を承認

・2020年11月16日、アルメニアのゾラブ・ムナサカニャン外相、辞任。

・2020年11月11日、アルメニア市民がアゼルバイジャンとの和平協定に抗議。国会を占領し、首相の辞任を求めた。

・2020年11月9日、アルメニア、アゼルバイジャン、ロシアがナゴルノ・カラバフの紛争を終結させる和平協定に調印

・2020年11月9日、アゼルバイジャンの領土であるナヒチェヴァン自治共和国付近を飛行していたロシアの軍用ヘリ「Miー24」がミサイル攻撃を受け墜落。アゼルバイジャンはロシアに対し、誤った撃墜したと謝罪した。

・2020年11月8日、アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフの戦略的に重要な町、シュシャをアルメニア軍から奪取。

・2020年11月、中東の過激派勢力2,000人が紛争に加わったと伝えられている。アルメニアはアゼルバイジャンの同盟国、トルコが関与したと非難。

・2020年10月28日、アゼルバイジャンのバルダ県への空爆(クラスター爆弾)で民間人21人が死亡。

・2020年10月25日、アメリカの仲介による停戦合意が破綻。戦闘再開。

2020年10月25日、アメリカの仲介でアルメニアとアゼルバイジャンが停戦に合意

ロシアのプーチン大統領によると、9月末からの戦闘で少なくとも5,000人が死亡。.

2020年10月17日。10月9日の停戦合意は破綻し、民間人13人が死亡、40人以上が負傷した。

・約4,400平方キロメートルの山岳地帯。

・キリスト教のアルメニア人とイスラム教徒のトルコ人が生活していた。

・ソビエト連邦時代、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの自治区に加えられた。

公式にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、人口の大部分はアルメニア人で構成されている

・現在、ナゴルノ・カラバフは分離主義勢力(自称当局)に占領されている。

・ナゴルノ・カラバフの大統領(自称)はアライク・ハルチュニヤン。

自称当局は、アルメニアを含む全ての国連加盟国に認められていない

・1988年から1994年の紛争で約3万人が死亡、推定100万人が避難を余儀なくされた。

・1994年の停戦合意後も膠着状態は続いていた。

・アルメニアは分離主義勢力(自称当局)を認めていない。

・アゼルバイジャンは「分離主義勢力=アルメニア軍」と認識している。

・トルコはアゼルバイジャンを積極的に支援している。

・ロシアはアルメニアに軍事基地を持っている。

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