国連は、エチオピア北部ティグライ地域の紛争で避難を余儀なくされた民間人への援助を届けるために、即時の一時停戦を求めている。
エチオピア政府とティグレ人民解放戦線（TPLF）の戦闘は11月4日に本格化し、これまでに少なくとも民間人数万人が隣国スーダンに逃げ込んでいる。
国連は戦闘地から避難場所へと続く人道的回廊（ルート）の開設と援助物資の輸送を望んでいる。
20日、政府はアクスム市とアドワ市を占領し、TPLFの軍隊は降伏したと発表した。
ただし、現地の状況は通信網が完全に遮断されているため確認できず、情報の正否は不明。
アクスム市はティグライ地域最大の都市のひとつ。アドワ市も戦略的に重要な地点に位置すると考えられている。
エチオピア難民
国連難民高等弁務官事務所（UNHCR）は、約32,000人がティグライ地域から隣国スーダンに逃亡しており、今後6カ月で必要に応じて最大20万人の難民に対応できる準備を進めると発表した。
スーダン支部の代表、アクセル・ビスチョップ氏は20日の記者会見で、「政府とTPLFの戦争は続いており、現時点で避難民の数を予測することはできない」と語った。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は人道的回廊の開設と、「人道援助を提供するために必要となる真実」を求めた。
スーダンの世界食糧計画代表を務めるハメド・ヌル氏はABCニュースの取材に対し、「戦闘は進行中であり、どこで発生するか分からない」と述べた。
ヌル氏は一部のTPLF軍が降伏し、民間人の流れの中に加わった可能性があるという報告に言及した。
スーダンのユニセフ代表、アブドラ・ファディル氏はティグライ危機について、「このまま避難民が増え続ければ、私たちは圧倒されるだろう」と述べた。
国連当局者によると、スーダンに逃げ込んだ人々は、突然大規模な戦闘が勃発したため、ほとんど何も持たずに避難しているという。
政府はアクスム市とアドワ市を占領し、東エリアのアディグラトを目指していると主張。その過程でシャイアも征服したと述べている。
シャイアは、人道機関が隣国エリトリアからの避難民、約10万人を保護しているコミュニティである。
人道機関によると、シャイアのエリトリア難民もスーダンに移動し始めているという。
アメリカのティボル・ナジ国務次官補は19日の記者会見で、「当事者たちは調停に関心を持っていない」と述べた。
米上院議員17名はマイク・ポンペオ国務長官に書簡で、アビィ・アハメド首相に停戦を促すよう要請している。
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。
・2020年11月14日、ティグレ人民解放戦線（TPLF）が、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃。
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代～1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線（EPRDF）を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線（OLF）などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府（TGE）を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺（数十人規模）が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。
