TikTokとWeChat、さようなら
9月18日、アメリカ商務省は21日に日付が変わった瞬間から、大人気のビデオアプリ「TikTok」とメッセージングアプリ「WeChat」を禁止すると発表した。
同省は声明の中で、「アメリカの国家安全保障を守るための措置」と強調した。
ドナルド・トランプ大統領は8月に大統領令を発出。中国産アプリのTikTokが9月20日までにアメリカ企業の所有にならなければ、シャットダウンすると発表していた。
ドナルド・トランプ大統領:
「中国共産党は、これらのアプリを通じてアメリカ国民および国内のデータを収集している」
「中国産の情報収集アプリは、アメリカの国家安全保障、外交政策、経済を脅かしており、この国の所有にならない限り、今後国内での使用は一切認めない」
ウィルバー・ロス商務長官は17日朝のフォックス・ビジネス・ニュースのインタビューの中で以下のように述べた。
ウィルバー・ロス商務長官:
「8月に発出した大統領令は、オラクルやウォルマートなどが協議を進めているTikTok買収とは一切連動していない。なお、国家安全保障上の問題により、Wechatは21日(月曜日)の0時00分に完全閉鎖される」
「TikTokは同国のバイヤーと現在取引を進めており、買収期限は11月12日まで延長された。ただし、21日(月曜日)の0時00分以降、ダウンロードおよびアップデートは禁止される。11月12日までに買収交渉がまとまらなければ、TikTokも完全閉鎖されるだろう」
同日、マイク・ポンペオ国務長官は記者団に対し、「私たちが提示した提案は至ってシンプルだ。中国共産党へのデータ流出を防ぐ、それだけである」と語った。
マイク・ポンペオ国務長官:
「私たちは中国産アプリの所有者に対する提案を見直し、期待した通りの結果になるか否かを評価している。現在の優先事項はトランプ大統領が述べている通りだ」
「成功すれば、アメリカの民間企業がTikTokを所有すると認められるだろう。しかし、失敗すれば、私たちは国民を保護する」
大統領令発出に伴い、TikTokは9月20日23時59分59秒以降、アメリカでダウンロードおよびアップロードできなくなる。また、WeChatは完全閉鎖され、送金や支払い処理なども全て禁止される。
TikTokは10代から20代のユーザーに支持されており、アメリカ国内の推定利用者数は6,500万人から8,000万人と言われている。
一方、WeChatは中国系アメリカ人コミュニティの間で圧倒的な支持を集めており、国内に約2,000万人のユーザーがいる。その大半は家族、友人、恋人とのチャット利用であり、中国とのビジネスに活用するユーザーも多い。
TikTokを所有する「ByteDance(バイトダンス)」の広報担当者はABCの取材に対し、以下のように述べた。
ByteDance:
「9月20日深夜からのダウンロードおよびアップロード禁止措置、そして、11月12日からのアプリ完全閉鎖措置に強く抗議してきたが、アメリカ商務省は我々の要求を無視した」
「我々はアメリカ政府の求める提案、サードパーティの監査体制、コードセキュリティの検証、米政府におけるデータの監視など、他のアプリよりはるかに厳しいセキュリティ対策と説明責任を承認している」
「アメリカのプロバイダーは、国内でTikTokのネットワークを維持および運用する責任がある。これには、アメリカの消費者に提供する全てのサービスとデータが含まれる」
「正当な手続きをとらずに強権的な規則が決められてしまった。トランプ大統領は気に入らない者を脅迫し、排除する。我々は不当な執行命令に対する挑戦を続ける」
WeChatを運営する「Tencent」の広報担当者はABCの取材に対し、以下のように述べた。
Tencent:
「アメリカ国内のWeChatは、中国本土以外のユーザーにサービスを提供するシステムを採用しており、常に最高水準のプライバシーとデータセキュリティを組み込んでいる」
「8月6日の大統領令発出以降、我々はアメリカ政府と協議を進め、懸念に対処する包括的な提案を提出した。今回の措置は非常に残念だが、我々は今後もアメリカのユーザーにサービスを提供したいと考えており、その実現に向けた話し合いを続ける予定である」
トランプ政権、日曜日からTikTokのダウンロードをブロック
中国産アプリ
TIKTokを所有するByteDanceは、トランプ大統領および取引相手を納得させつつ、自分たちの利益も守らねばならない。そして、この実現は難しいと言わざるを得ない。
情報筋によると、中国共産党は「TikTokを売却するぐらいなら、完全閉鎖した方がよい」と考えているという。
トランプ大統領の要求はハッキリしている。さらに、彼がビジネス、取引が大好きだということを忘れてはいけない。
世界を代表する人気アプリになったTikTokの禁止措置は、世間の注目を集める。そして、それが実行されるまで、まだ24時間以上猶予がある。
交渉は水面下で進められており、トランプ大統領の求めるアメリカ企業への巨大な利益(買収)が確定すれば、最後の1分で状況はひっくり返るかもしれない。
アメリカ商務省は声明の中で、中国共産党が「アプリを使用して、国家安全保障、外交政策、および経済を脅かしている」とコメントした。
これに対しByteDanceは、「データはアメリカとシンガポールのサーバーに保存しており、中国がそれを見ることはない」と疑惑を否定した。
WeChatを運営するTencentもデータの透明性を主張、「アプリ内のメッセージや個人情報は厳重に保護されている」と述べた。
なお、これらの中国産アプリを警戒しているのは、アメリカだけではない。
インドは、国内でのTikTokとWeChat利用を完全に禁止している。また、イギリスのプライバシー監視機関、UK Information Commissioner's Officeも、現在TikTokの調査を進めている。
TikTokはビデオ共有アプリである。ユーザーは最大1分のビデオを投稿できると同時に、それらを保管する膨大なデータベースサーバーへのアクセスを許可される。
結果、TikTokのサーバーは、ユーザーが視聴、コメントした動画、「位置情報」「電話モデル」「アプリ内の個人情報」などを収集する。
このデータ収集方法は、Facebookなどのソーシャルネットワークとよく似ている。
WeChatは2011年に誕生した多目的アプリである。
ユーザーは家族や友人にメッセージを送ったり、モバイル決済、他のローカルサービスなどを利用できる。なお、メッセージおよびアプリを使った電話は基本無料である。
中国ではWeChatを「万能アプリ」と呼び、国内のユーザーは10億人以上と言われている。
なお、中国国内の全てのソーシャルメディアプラットフォームと同じく、WeChatも中国共産党が違法と見なすコンテンツを検疫しなければならない。
3月のレポートによると、WeChatでは2020年1月1日から「コロナウイルスの発生に関連するキーワード」は一切検索できず、メッセージへの打ち込みも禁止されている。
WeChatが中国共産党の監視下にあることは、コロナウイルス情報のブロックで証明されている。アメリカ国内での事業再開を望むTencentは、検疫システムを抜本的に見直さなければならないだろう。
【関連トピック】
・トランプ強制販売入札の結果、オラクルを選択
・トランプ大統領はなぜ中国のコミュニティアプリを破壊したいのか?
・TikTok/危険なDIY美容トレンド